小説

□22話 修学旅行最後の夜
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午後7時過ぎ。
W高のほとんどの生徒は、自由行動を終えてホテルに着き、自分達の部屋に入っていた。
それは由稀菜たちも同じだった。
同じ部屋の由稀菜と里奈は、ぬいぐるみたちに夕食を与えている。
自由行動の途中でコンビニに寄って、おにぎりやデザートなどを買っていた。
クロ、だい、ロウはそれを食べている。

「由稀ちゃん。お風呂どうぞ!」
「ありがと!」

由稀菜と里奈はお風呂に入り、一日の疲れを取っていた。
着替えとケータイを持ち、洗面所へと向かう。
服を脱ごうと服に手をかけた途端、電話を知らせる着うたが由稀菜のケータイから流れてきた。
電話をかけてきたのは千晴だった。

「もしもし?」
「もしもし、由稀ちゃん?」
「どうしたの?」
「これから姉御の部屋でお菓子パーティーをするんだけど、来ない?」
「メンバーは?」
「オレと姉御、真ちゃんと玲奈さんの4人なんだけど・・・。」
「あー、ゴメン。行きたいのは山々なんだけど、これからお風呂だから・・・。」
「そっか、分かった。」
「うん。ごめんね?」

ピッと電話を切る。
待受け画面になったケータイをジッと見つめる由稀菜。

「・・・お菓子、食べたかったな。」

ボソリと呟き、ケータイを閉じて置く。
上の服を脱いだ時、後から声をかけられた。

「行かんくて正解やな。」
「ギャーーーーーーーーー!!!ちょっ、ロウ!!勝手に入ってこないでよっ!!」

後を見れば、由稀菜を見上げるロウ。
由稀菜は服で前を隠し、ロウを見る。

「どうせ、お菓子パーティーでもするから、来ぃへんかっちゅう誘いの電話やったんやろ?」
「な、何で分かるの?」
「勘や勘。」
「なんで、行っちゃいけないの?」

私だってお菓子食べたい、と続けて言う。
ロウは真剣な顔をする。
それを見て、由稀菜はよほどの理由があるのではないかと思った。

「まさか、敵?」

真剣に聞けば目を下に向けるように目を反らされる。
それが、由稀菜の中でロウが、その通りだ、と言っているように思えた。
そんな時、ロウが顔をあげる。





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