小説

□21話 綺麗な音色と
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説明が終わり、早速作業に取り掛かる。
と、バックからだいが少し顔を出した。

「ね、由稀。」
「だ、だい!?どうしたの?」

バックをテーブルで隠しながら、顔を近づける。
幸い誰も気付いていないようだ。

「あのね、特定出来ないんだけど、敵の気配がするの。」
「嘘!?本当に?!」
「うん。居場所が特定できない程かすかだけど、一応言おうと思って。」
「そっか。うん、気をつけるよ。ありがと、だい。」
「えへへ。」

ニッコリと笑って、だいは奥に引っ込んだ。
次にロウが顔を出してきた。

「由稀、ヒントや。」
「ん?」
「敵は近くにおんねん。身近やからって見落としたらあかんで?!」
「ちょっ、ロウ!?」

止める由稀菜を無視して、ロウも奥に引っ込んだ。

「な、何の事なのよー!?」

小声で叫ぶ由稀菜。
流石に聞えたのか、明希が由稀菜に目を向けた。

「どうしたんだ?由稀菜。」
「へ?あ、いや、何でもないよ。あ、わー!凄い、明希!!」

黙々と作業していた結果、明希のオルゴールはかなり出来ていた。

「そうか?結構シンプルだろ。」
「けど、凄い!」
「褒めすぎだって。」

照れた様子もなく、苦笑いする明希。

「ん?明希。肩に蚊が・・・。」
「え?」
「待ってよ。」

肩に止まっていた蚊をペチンと叩く。
殺ったのか、蚊の姿が消えていった。

(あ。これだったんだ。)

心中納得した由稀菜だった。

「ありがと、由稀菜。」
「うん!」
「しかし、変な蚊だな。」
「だよねー。こんな寒い地域にいるなんて。」
「それもおかしくね?」
「ま、良いじゃん!さ!早く作るぞ!!」

そう言って作業に掛かろうとする。
その前にバックに目を向けると、だいがバックの中でVサインを出していた。
それに由稀菜は頷く。
由稀菜はオルゴール作りに集中した。





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