小説

□21話 綺麗な音色と
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オルゴールを作らせてくれるオルゴール堂に歩いて向かう、W高の一部の生徒。
由稀菜は真と里奈の間に入り、三人で会話をしながら足を進めている。
千晴はといえば、明希と話しをしながら歩いている。

「あ・・・。」

少し歩いた所に、オルゴール堂はあった。
中に入り、二階に案内された。

「奥から順に座ってください。」

オルゴール堂の人に言われ、一番最初に足を踏み入れた由稀菜。
由稀菜が座ったのは、一番奥の、窓際から二番目の席。
右隣と右斜め前には5組の友人。
正面には真。
左斜め前には里奈。
そして、左隣には・・・。

「あれ。なんで明希ちゃん?」

明希が座った。

「俺がいちゃダメか?」
「え、いやっ。・・・ってか、千晴は?」

先刻まで一緒にいた、明希と千晴。
だが、明希の横には千晴ではなく三組の友人。
千晴が何処に行ったのかと問えば、後ろ、とだけ言われる。
由稀菜は、明希に言われたとおり、後ろを振り返る。
すると、由稀菜の右斜め後に千晴の姿があった。

「え、千晴?」
「うん?」
「なんでそこにいるの?」
「えっ、別に。」
「明希ちゃんの隣じゃないの?」
「うん。」

由稀菜は、二人が仲良く話をしていたので、てっきり二人は横に並んで座るかと思っていたみたいだ。
だからか、由稀菜の中でいくらかの疑問がわいているみたいだ。
由稀菜は明希の方に向きなおした。

「で、何で此処に?」
「千晴やひつに由稀菜の隣に座れって言われたから。」

明希の言葉を聞き、由稀菜は里奈の方をバッと見た。
由稀菜の視線に気付いた里奈は、由稀菜と目を合わせた。

「だって、千晴ちゃんが姉御に由稀ちゃんの隣に座れって言ってたから・・・。」

里奈の言葉を聞き、由稀菜は視線を里奈から千晴の方に向けた。
すると、千晴はずっと由稀菜の様子を見ていたみたいで、すぐさま目を合わせた。
そして、エヘッとだけ言った。

「まぁ良いじゃんか、由稀菜。」

止めるように声をかける明希。
由稀菜は、うん、とだけ言って正面に向きなおした。

「ゆっち。何でそんなに嫌がるの?」

由稀菜の反応に疑問を抱いた真が由稀菜に問う。

「俺が嫌いか?」

真の質問に続けて、明希も由稀菜に問う。
由稀菜は明希の問いに、違うよ、と即答する。
そして、続けて口を開く。

「なんか、弄られた事にモヤモヤを感じた。」

由稀菜の答えに、真や明希、千晴や里奈は唖然とする。
そして、プッとふき出す。

「わ、笑うなっ!!」
「ご、ゴメンね、由稀ちゃん!」
「笑いながら誤らないでよ、里奈〜!!」

クスクスと四人は声を殺して笑う。
由稀菜は四人の笑を止めようと必死だ。

「はい。それでは、これからオルゴールを作る説明をするので静かにしてください。」

そんな時、オルゴール堂の人が口を開いた。
その声を聞き、全員口を閉じ、シーンとする。
由稀菜は心の中で、その人に感謝した。





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