小説

□15話 敵の姿は愛らしきもの
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それぞれの体験学習を終え、昼食をとるW高の生徒。
一番最初に昼食をとり始めたのはラフティングの選択者。
その次に、甘い香りを漂わせたジャム作りの選択者。
そして最後は・・・・。

「白梅、これ。」
「ん、ありが・・・・ゔえ゙ー?」

びしょ濡れで帰ってきた、悠他フィッシング選択者。
まさかの格好に、由稀菜の口はポカーンと開いたままだ。
そんな由稀菜にだいとクロの入った袋を渡す悠。

「な、何事?」
「フィッシング中、雹が降ってきて・・・。」
「雹?」
「そう。」
「動物の?」
「・・・里奈。それは論理的に無理でしょ?」

里奈のボケに対し、ツッコミを入れる由稀菜。
そして、悠は同じフィッシング選択者達に呼ばれ、昼食をとりに席へと向かっていった。

「雹なんて、さすが北海道。」
「私たちの所は晴れてたのにね?!」

ねー、っと話しをする里奈と由稀菜。
そして、袋の中から由稀菜と里奈を呼ぶ小さな声が聞こえてきた。

「悠さん、敵の仕業でああなっちゃったんだ。」
「敵?」
「おう。里奈、由稀。お前等は大丈夫だったか?」
「うん。」

周りに見られないように、小さい声でボソボソと話しをする二人と二匹。
一応、今周りに敵がいないか確認をするが、気配はない。
あるといえば・・・。

「ゆ、由稀。」
「あれ、柚香子と乃莉ちゃん。どうし・・・・ゔわー。」

柚香子の持っている袋から発せられている黒いオーラ。
それが何のオーラなのか、一瞬にして分かった由稀菜と里奈と千晴。
そして、苦笑いをする柚香子と乃莉香。

「と、とりあえず、バスが出発するまでだい達をこっそり遊ばせてあげよ?」

黒いオーラを発していたのがアニキだと分かった一同。
急いでお土産を買い、由稀菜や里奈、千晴や柚香子の乗る1号車へと乗り込んだ。
そして、ごそごそとぬいぐるみ達を出した。
不思議な事に、バスの中は部員の子達しかいなかった。

「これで一安心だね。」

楽しく話をする六人。
そして、相変わらずのだい、クロ、アニキ、暁、みつの五匹。

「引っ付くな、アニキ!!」
「由稀〜!アニキが僕のクロをー!!!」
「犬ッコロ!どさくさに紛れて自分のものにすんじゃねぇ!!」
「アニキ、離れてくださいよ!」

こっちは修羅場らしい。
見ているものは細く微笑んでいたり、苦笑いしていたり。
ただ一匹だけ・・・。

「フフッ。相変わらず仲良いね〜!」

『天然恐るべし!』とその場にいた六人の心が一つとなった。

「でも、そろそろ戻らないと・・・。」
「ヤバッ!帰ってきた!!」

時計を見れば、集合十分前。
律儀な生徒が戻ってきていた。
本人達の意思を無視して、パートナー達を袋に突っ込む。

「まだ話は・・・!」
「今回は一緒のバスだから。」
「チッ。」
「それじゃあ、うちらは戻るね?!」
「うん。」

遥と乃莉香達はそれぞれのバスに戻っていった。
その入れ違いに、生徒達が入り、あっという間に全員集合した。

「はーい!では、旭山動物園に向かいまーす!!」

ガイドさんの言葉と共に、バスは出発した。
バスが動き出し、窓の外にフッと目をやった由稀菜。
先刻まで見えていた太陽は雲に隠れ、どんよりとした天気に変わっていた。
まるで、今にも雨が降りそうだった。





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