小説

□10話 兄貴と子分とライバルと
2ページ/5ページ

「うーん。・・・ただのぬいぐるみなのかなぁ。」

由稀菜は更衣室に入りドアを閉め、ぬいぐるみを持ち上げ、ジッと見た。
けれども、やはりぬいぐるみは動かない。

「・・・でも、なんで空から?・・・でも、動かないしなぁ。」

うーんと唸り、ぬぐるみを凝視する。
違うな、と思い、諦めたその時だった。

「・・・シ。」
「へ?」
「・・・・メ、シ。」
「喋った!!」

ぬいぐるみはかすかだが喋った。
クロ達の仲間だと確信した。

「・・・食い、物。」
「お腹空いてるのかなぁ?」

自分の制服を置いてある棚から、紙袋を取り出す。
その紙袋の中からおにぎりを取り出す。

「・・・食べる?」
「!メシッ!!」

由稀菜の手からガシッとおにぎりを奪い、巻いてあったラップを雑に剥がして勢いよく食べた。
人間からしてみれば普通の大きさのおにぎりは、ぬいぐるみが持つことでとても大きく見える。

「・・・お茶、飲む?」

紙パックのお茶を差し出せば、何も言わずバッと奪い取ってグビグビと勢いよく飲む。

「ッ・・・プハァ!ああっ、助かったぜ。」
「・・・あのぉ。」
「あん?俺様に何か用か?」
「あの、あなたってあの子達の仲間?」
「あの子達?」

目つきの悪いワシ。
特徴的な喋り方。
きっと仲間なのだろうが、本人は何もわかっていない。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ