小説

□10話 兄貴と子分とライバルと
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授業開始のチャイムが鳴り響く。
体育であった由稀菜は既にグラウンドに出ていた。
空は雲一つない快晴。
冬に入りそうな今日この頃では、陽の光がなんとも心地よかった。

「すっごいいい天気〜!」

ぐっと背伸びをする由稀菜。
その横に、千晴と悠が立ち並ぶ。

「あれ?梅、アレなんだろ。」
「へ?どれ?」

天を仰いだ悠につられ、空を見上げた由稀菜。
黒い点が一つ、空に浮いている。

「鳥とかじゃないの?」
「でも、近づいてきてるような・・・。」

あっさりと鳥と判断した由稀菜だが、黒い点は確実に落ちてきていた。

「やっぱり落ちてるって!」

指差す悠。
それを目で追って、空をもう一度見上げた。

ゴッ

「っ!!」
「「あ・・・。」」

降ってきたある物は、由稀菜の頭にぶつかった。
痛いのかよく分からないで頭を抑える。
降ってきたものと言えば、頭を滑り落ち、地面に叩きつけられた。

「これって・・・。」

こげ茶色のワシのような鳥。
けれど一目瞭然だった。

「ぬいぐるみ?」

千晴がそれを持ち上げた。
動きはない。

「もしかして、クロくん達の仲間かな?」
「どうだろ。動くのが一番のヒントなんだけど・・・。」

見つめる最中、鳥は一向に動かない。

「どうする?」
「もっとくのもちょっとなぁ・・・。」
「・・・仕方ない!」

そう言って、由稀菜は、近くにいた先生に少し告げる。

「どうしたの?」

戻ってきた由稀菜に問う千晴。

「とりあえず置いてくる。後でクロ達に会わせてみよ?」
「だね。」
「それじゃあ、行ってくる!」

千晴からぬいぐるみを受け取り、更衣室に向かった。





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