小説

□04話 新しい仲間は同士様
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「あ〜!忘れてた。」
「でしょ?」
「ひつもなのか・・・。」
「にしては落ち着いてるね、ひつ。」
「えっ、お嬢さん?!」

里菜に事情を説明し終えた時、窓から乃莉香の声が聞こえてきた。
由稀菜の席は廊下側の一番端の席なのだ。

「みーさん、いつからいたの?」
「由稀ちゃんがひつに話をしだした時から、かな。」
「お嬢さん。それって最初からって事じゃない?」
「全然気づかなかったんだけど。」

乃莉香が来た事に気付かなかった一同。
そして、由稀菜と柚香子と一緒に、里菜と乃莉香、そして様子を見に来た悠の五人は考え込む。

「だいの事なら心配すんな。」
「クロ?」

里菜の鞄からひょこっと出てきたクロ。

「どういう意味?」
「俺が面倒見といてやるって言ってんだ。」
「本当!?」
「僕、クロと一緒にいられるの?!」
「だい、起きたの?」

クロの声が聞こえてきたからなのか、だいが鞄から顔を出した。
由稀菜はだいを鞄から出し、膝の上に乗せた。

「ねぇ由稀!僕、クロと一緒に居る!!」

由稀菜のブレザーをギュッと握り、由稀菜の顔をジッと見るだい。

「う〜ん・・・。クロ。クロは何処で過ごす気?」
「そりゃあ、屋根の上しかねぇだろ?!」

由稀菜の問いに、当たり前な事聞くなよ、といった顔をして答えるクロ。
一同、流石ネコ、と思った。

「ね〜え、由稀ぃ!!!」
「う〜ん・・・。」
「良いじゃん、由稀。クロに任せちゃいなよ!」
「そう、だね。」

柚香子の説得もあり、由稀菜はクロに任せることにした。

「じゃあ、お昼が来たら三階の女子トイレの窓のところに来て、クロ。」
「な、なんで俺が!?」
「だって、だいのお弁当を渡したいし・・・。取りに着てよね?」
「・・・チッ。しゃぁねぇな。わーったよ!」

だいの事となると断れないクロ。
そんな性格を知っていて頼んだ由稀菜だった。

「じゃあもう行ってて?そろそろクラスの子達が来ちゃうから。」

クロとだいを抱え上げ、イスを立つ由稀菜。
そして、反対側の窓の方へと足を進める。

「あっ、ちょっと待った、梅!」
 
悠に呼ばれ、由稀菜は悠の方を見た。
すると、悠は駆け寄ってきてクロとだいにそれぞれ紙袋を渡す。

「・・・悠さん。なに、これ?」

不思議に思った由稀菜が問う。

「水分・・・っていうかジュース。喉渇くでしょ?」
「ありがとう!!」
「サンキューな。」

やっぱり悠は気が利くな、と思った一同だった。
悠にジュースを渡された二匹は窓から出て、屋根の上へと上っていった。
そして、二匹が教室の中から見えなくなったと同時に、クラスに人が入ってきた。

「じゃあ、一組に戻るね?」

そう言って、6組を出て行く柚香子。
残った乃莉香は里菜の腕を引っ張る。

「わわっ!お嬢さん!?」
「帰るよ。授業始まる。」

乃莉香の言葉で時計に視線を移す。
すると時計は、八時三十分を示していた。

「さ、行くよ。」
「ちょっ、引っ張らないで、お嬢さん!!」

里菜の腕を引っ張りながら、二人は教室を出た。
二人に続いて、悠も自分の教室へと戻っていった。





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