小説

□01話 喋るぬいぐるみ
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人間誰しも、一度は不思議な体験をするものだ。
勿論、ここW高に通っているとある子達も・・・。

「はいはい!部会始めるから、みんな席についてぇ!!」

W高の文化部の一つ、ここ漫画研究部こと慢研にはある一定の子達が集まっている。

「ほら、そこッ!!萌えを語らない!!」

殆どの子が“腐女子”なのだ。

「だって、由稀ちゃ〜ん!うちのクラスの男子達がッ!!」
「あ〜はいはい。後で聞いてあげるから、とりあえず私の話しを聞きなさいな、里奈。」

この慢研をつくりあげてくれた三年生は受験の為に引退し、今では二年生が部をまとめている。
由稀と呼ばれ慕われている、白梅 由稀菜(シラウメ ユキナ)が新部長を勤めている。

「・・・という事なので、よろしくお願いします!!じゃあ、今日の部会はおしまい。」
「由稀ちゃん!!」
「だぁ〜もう。はいはい。」

部会を終え、由稀菜に声をかけたのは、三組の平松 里奈(ヒラマツ リナ)。
由稀菜は、里奈に呼ばれ二年生の輪の中へと入った。
そこに集まっていたのは、由稀菜と里奈も含めた二年生七人だった。
みんな、それぞれ話しをしている。

「あの、先輩。今日はもう、帰ります。」
「あっ、はぁい!お疲れ様でした。」

由稀菜に一言言って、部室から出ていく一年生達。
部室には二年生のみ。

「・・・どうする?部活が終わる五時まで、まだ時間あるけど・・・帰る?」
「みんなでギリギリまで語ってれば良いじゃん!」
「そうだね!!」

由稀菜の質問に答えたのは、副部長で一組の曽田 柚香子(ソダ ユカコ)。
バカキャラの由稀菜と違い、柚香子はしっかり者。
由稀菜は頼りっぱなしな事が多い。

「あ、それでね!三組の男子が・・・!!」
「そうそう!可愛かったよねぇvv」

里奈の話しにあいづちをうつ、同じクラスの藤沢 奈都美(フジサワ ナツミ)と荻野 乃莉香(オギノ ノリカ)。
そして、三人の話しを聞きキャーキャーと黄色い声を出す由稀菜と柚香子。
そんな二人を見て苦笑いをする、二組の千代田 遥(チヨダ ハルカ)と由稀菜と同じ六組の槻 千晴(ツキ チハル)。
以上七人が慢研・・・W高代表(?)の腐女子達。

「・・・あれ?由稀。あれ、由稀の?」
「どれ?」
「あれ!」

遥に呼ばれ、ふっと遥が指を指している方を見れば、黒ネコのかわいらしいぬいぐるみ。
一番に反応して近付いたのは、里奈と千晴と乃莉香だった。

「「「カワイイvv」」」

ネコが大好きな三人は、ジッとぬいぐるみを見ている。
そして、千晴が由稀菜にむかって「これ、由稀ちゃんの?」と聞いてきた。

「えっ・・・、ううん。里奈か千晴のか乃莉ちゃんのじゃないの?」

身に覚えがない由稀菜は、みんなに聞いてみたが、みんな「違う」と首を横に振った。

「じゃあさ、持って帰っちゃえば?」

持ち主がいなければ誰かが持ち主になれば良い!・・・そう思った由稀菜。
職員室に持っていこうとは思わなかったみたいだ。

「「欲しい!」」

由稀菜に言ったのは、里奈と乃莉香だった。
二人のネコ好きは、みんなもよく知っていた。
勿論、お互いも・・・。

「だ〜めッ!手ぇ離せぇ、ひつぅッ!!」
「ダメだって、お嬢さん!!これ、僕の!!」

ネコのぬいぐるみの腕をそれぞれ引っ張る二人。
そんな二人を見て、「カワイイなぁv」と和みだす由稀菜。
そして、誰も止めようとはせず、「仲良いなぁ」とだけ言う。

「ちょっ、乃莉香ちゃん、ひつ。そんなに引っ張ってたらちぎれちゃうよ!?」

やっと声をかけたのは奈都美だった。
だけど、二人は止めようとはしない。
まるで姉妹の玩具の取り合いみたいだ。
・・・そんな時だった。





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