番外編

□王子と愉快な仲間達
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それから三日がたった。
あの日のように、明希がお姫様に追いかけられることはなくなった。
けれど、別の事で明希は頭を抱えていた。

「ふわー!」

長く広い廊下を歩きながら、明希は大きな欠伸をした。
このところ寝不足で欠伸がやまない。
そんな時、背後から気配を感じた。
だが、後ろを振り返るが誰も居ない。

「気のせい、か。」

明希は気にも留めず、一つの部屋に入った。

「料理長。」
「あー。いらっしゃい、王子。今日はどんな用件で。」

明希が入ったのはキッチン。
悠は明希に椅子を差し出し、机を挟んで向き合うように座った。

「ふわー。」
「寝不足ですか?」
「ああ。最近四六時中誰かに見られてる気がして。」
「へぇ・・・。」
「人の気配はするんだけどな。夜は特に変だ。」
「というと?」
「寝ていると・・・こう、頭の上でピカッと光るんだよ。目が覚めて辺りを見ても誰も居ないし・・・。」
「寝ぼけてたとか。」
「そうだといいが・・・。」

明希は頭を抱えて溜息を一つ吐く。
そして、本日何度目か分からない欠伸をする。
そんな明希の前に、悠はコーヒーを置く。

「気にしないことが一番です。とりあえず、今はそれを飲んで落ち着いてください。」
「ありがとう。」

明希は、出されたホットコーヒーを飲む。
悠もコーヒーを口にする。

「そういえば王子。ここに来たのはそれだけじゃないですよね。」

コーヒーの味を堪能しながら言う悠。
明希は一瞬驚きの表情をつくるが、すぐに元に戻し、コーヒーを飲んだ。

「よく分かったな。」
「顔に書いてますよ。」

悠の言葉を聞き、明希はハハッと微笑する。
そして本題に入る。

「女性には、何を送れば喜んでくれると思う?」
「何処かの姫に求婚ですか?」
「いや。この前、遥や姫たちに追われた時に助けてくれた女性が居るんだ。」
「それで、その人にお礼がしたいと?」
「ああ。」

そうですか、と呟きながら悠はコーヒーを一口飲む。
そんな悠をジッと見る明希。

「私は本人に直接聞くのが一番だと思いますよ?」
「・・・だよな。」
「聞きに行ったらどうです?」
「いつ?」
「今。」
「今!?」
「王子がお暇ならですがね。」
「俺は暇だけど・・・。」

善は急げって言うでしょ?と言い、悠はコップの中のコーヒーを全て飲み干した。
明希は躊躇っているようで、そうだけど・・・と呟いた。

「それと、その女性の家が安全なら、その人の所で一眠りしてきたらどうです?」

悠の提案を聞き、それもいいかもしれないと思った明希。
手にしていたコーヒーをすべて飲み干し、立ち上がった。

「そうする。ありがとう、料理長。コーヒー、ご馳走様。」
「いえ。お気をつけて行ってらっしゃい。」

悠に見送られ、明希はキッチンを出た。
・・・その時。

「わっと!王子!!」
「!?」
「明希〜!!」

自室に行き、支度をしようとキッチンの横の曲がり角を曲がった時、二人の執事とぶつかりそうになった。

「・・・何やってんだ?」
「勿論仕事ですよ。ねー、ちぃくん?」
「うん!」

二人の執事とは、遥と柚香子だった。
明希と同じくらいの背丈の柚香子は、村出身の17歳の男の子。

「王子はどちらへ?」
「ちょっと出掛けてくる。」
「えー!明希出掛けんの?」
「ああ。じゃあな。俺は急いでるから。」

明希は遥と柚香子と短い会話を交わし、自室に急いだ。
そんな明希の後姿を見て、遥と柚香子は顔を見合わせてニヤリと笑い、仕事に戻った。





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