小説

□22話 修学旅行最後の夜
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「っ痛・・・。んな本気に蹴らんでもええがな。」

のっそりと立ち上がり、蹴られた部分をさすりながら、ロウは由稀菜のベットの上へと上がった。
そんなロウを見て、里奈が口を開いた。

「女の子に体重の話しはタブーだよ、ロウ?!」
「せやな。忘れとったわ。」

さする手を止めて、飴を口に放り込む。
口の中でそれを転がしながら再び口を開く。

「ああでも言わんと、あいつは行ってしまうやろ?」
「・・・え?」
「おっ!この飴美味いやん!」

誤魔化すように飴の感想を言うロウ。
里奈とクロは訳が分からず、目を見合わせて首をひねった。
そんな中、だいは何故かソワソワしていた。

「だい、どうした?」
「・・・うん。」

そんなだいを見て心配したクロがだいに話しかけた。
だいは下を向いたまま口を開いた。

「僕達ぬいぐるみにはパートナーの感情や思いが全部伝わってくるんだけどね・・・。」

口を閉じるだい。
その場がシーンと静まり返る。

「由稀が・・・。」
「由稀ちゃんが?」
「・・・泣いてた。」

だいの言葉を聞いて、里奈とクロはロウの方を見る。
ロウは一人と一匹を見て驚く。

「あのね、ロウの所為じゃないの。」
「じゃあ何で?」
「自己嫌悪で、泣いてたみたい。」
「「「自己嫌悪?」」」
「うん。」

だいは、里奈とクロとロウに先刻由稀菜が思っていた事を話した。
里奈は苦笑いしながら、由稀ちゃんらしいな、と言った。
だいはベットからピョンッと下りた。

「だい、何処行くんだ?」
「由稀のとこ!」
そう言って、だいは洗面所に向かった。





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