番外編

□王子と愉快な仲間達
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森の中に入った王子は、森の奥へと向かっていた。
そんな時、何人かの話し声が聞こえてきた。
木の陰に隠れて姿を確認する。
すると、小さな動物のようなものが木の上を眺めていた。
不思議に思った明希はそっちに近付く。

「・・・おい。」
『ギャー!』
「・・・そんなに驚かなくても。」

しゃがんで話しかける。
ふわふわした六匹を凝視する。

「人間に、見られ、ちゃった。・・・僕、怒られちゃう。」
「俺も、だな。」
「っていうか、みんなでしょ?」
「俺様は逃げる!」
「逃げるなんてズルイッスよ〜!」
「そうよ〜。」

六匹は顔を青ざめて何かを話す。
明希は何の事を言っているのか、と思い首をかしげる。

「つうか、お前ら、なんだ?」
「僕達はぬいぐるみの姿をした情報屋!」
「何でそんな姿をしてるんだ?」
「この方が目立たないから!!」

イヌのぬいぐるみが答える。
明希は心の中で、そっちの方が目立つだろ、とツッコム。
そんな時、木の上から物音とソプラノボイスが聞こえてきた。
ぬいぐるみたちはそっちの方を見る。
明希もぬいぐるみたちにつられ、そっちを見上げながら立ち上がった。

「誰か来たの?」

木から下りてくる女の子。
下が見えていないのだろうか、誰がいるのかは分かっていないようだ。
そんな女の子に、飛んで近付くワシのぬいぐるみ。

「おせぇんだよ、アホ!」
「ちょっ、痛い!!」

くちばしで女の子の頭をつっつくワシのぬいぐるみ。
中々その行為をやめようとしない。
そんな時、ズルッという音がし、女の子が足を滑らせた。

「キャッ!」
「危なッ・・・!!」
『由稀(の姉さん)(ちゃん)!!』

ぬいぐるみたちは、女の子の名前を呼ぶ。
木から落ちた女の子は、怖さ故に目を閉じた。
そして、痛みを感じないことを不思議に思い、女の子はゆっくりと目を開けた。

「大丈夫ですか?」

女の子の目に映ったのは、見知らぬ男性の顔。
助けられたという事や、お姫様抱っこをされているという事に気が付くまで少し時間がかかったのだろうか。
女の子は少し間をおいて焦りだした。

「ス、スミマセン!重いですよね?っていうか、助けてくれてありがとうございました!!」

一気に色々と言う女の子。
女の子の様子を見てついついプッとふく。

「大丈夫ですよ?・・・貴女の名前は?」
「由稀菜と申します。・・・あの、貴方は?」
「俺は・・・。」

由稀菜という名の女の子は名を名乗る。
そして、明希も自分の名前を言おうとした時、クロネコのぬいぐるみが由稀菜の名前を呼んだ。

「知らないにおいだ。」
「人?」
「だな。」
「何人?」
「二十人くらい。」

クロネコのぬいぐるみの言葉を聞き、明希の脳裏に遥やお姫様の顔が浮かぶ。

「俺を追いかけてきたんだ。」

明希の言葉に疑問を抱き、全員は明希を見る。
疑問を抱きつつも、由稀菜は明希に話しかけた。

「私の家で良かったら来ますか?下手に逃げ回るより安全だと思いますけど・・・。」

明希に提案する由稀菜。
明希は悩むが、声はどんどん近付いてくる。

「お願いしても、良いですか?」
「はい。・・・でも。」
「でも?」
「そ、そろそろ下ろしてもらえますか?」

顔を赤くし、恥ずかしそうに言う由稀菜。
そんな由稀菜を見て再び微笑し、スミマセンと言って明希は由稀菜を下ろした。

「こっちです。」

そして、明希は由稀菜とぬいぐるみたちに案内され、由稀菜の家へと向かった。





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