CODE-440短編・ショートショート
□【バレンタインのキューピット】
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彼女はわたしを着飾った。わたしの見栄えを良くするためだ。わたしはピンクの紙に包まれ、赤いリボンが付けられた。きっと彼女の気持ちを表すと、こういう風になるのだろう。
そういえば彼女はいつから彼のことを想っているのだろうか。彼女がどれだけ彼のことを想っているかはわたしを見ればわかる。その気持ちはいつからなのだろうか。
つい最近好きになったのだろうか。それともずっと恋い焦がれているのだろうか。
いよいよその時がきた。二月十四日のバレンタインデー。
わたしはこの日に、この日のために生まれた。
彼女の望み通り、わたしは恋のキューピットになれるのだろうか。できればキューピットになりたい。それがわたしの役目なのだから。
この日はとても肌寒い日だった。空はどんよりと曇り、雪が降るのではないかと思われた。
彼女は玄関から出て空を見上げた。彼女から吐き出される息は白い。彼女は決意を胸に秘めて歩きだした。
すれ違う人々は襟を立て、体を丸めていた。時折吹き付ける寒風に体を震わせていた。彼女もまた体を震わせる。