CODE-440短編・ショートショート
□【バレンタインのキューピット】
1ページ/5ページ
わたしは知っている。わたしには彼女の愛が込められていることを。
わたしは知っている。わたしは彼女の憧れの人へのプレゼントであることを。
彼女はわたしに想いを託して彼に渡すのだ。
そんなわたしに愛を込めてくれた彼女のために、わたしにはなにができるのだろうか。
しかしわたしには彼女のためにできることが何一つない。ただ彼女の恋の成就を祈ることしかできないのだ。
わたしはわたしが生まれるまでを見ていた。
彼女はわたしを生むために出来ることを一生懸命にした。そのことは誰よりもわたしが知っている。
鍋で暖める時、焦がさないように見守っていた。型にはめるとき、形が変になるのではないかと不安な顔の彼女。どれも彼女の愛情があるからこそだった。
わたしは彼女の恋を成就させるために神様にお願いした。
「それはできない」
神様の答えはこうだった。
神様でも人の運命を決めることはできないらしい。神様にもできないのだ。わたしはただ見守ることしかできなかった。