CODE-440短編・ショートショート

□【無邪気な笑顔のために】
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ただ、もし恋だというのなら、その恋が成就して欲しいと願っている。

ある日の放課後。
私はいつものように、次々と家路につく生徒達を眺めていた。
教室にいる生徒の人数も片手で数えられるほどになった頃。
どこかからネコが入ってきた。
残っている生徒達は気付いていないようだった。
ネコは黒い毛で包まれた子猫だ。
黒い猫は縁起が悪いと言うがそんなことはない。
かわいいじゃないか。
窓から差し込む朱の光に照らされながら、小さな足でトコトコと歩いていた。
どうやら戸が開いていたらしい。
しばらく眺めていると、猫は私のいる机に飛び乗った。
辺りを見回し座る。
後ろ足で首の辺りを掻いていた。
なんて器用なんだろうか。見ていてそう思う。
ネコは立ち上がってあくびを一つ。
眠いのだろうか。ネコは私に近づいてきた。
ネコをこんな間近で見るのは初めてだった。
なんて毛並みが……!
顔を引っ掻かれた。
ネコは私の顔に傷を付けるなりどこかへ行ってしまった。
ネコほど油断のできない生き物はないと学習した。
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