novel
□螢舞う頃
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恋し 恋しと鳴く虫よりも 鳴かぬ螢が身を焦がす
俺様…少し前まで機嫌が悪かった
だってさ、愛しのハニーはずっと幼なじみ達とばかり、話しているのだから
其に 蒸し暑いし
しいなは、こういうドンヨリとした気温の時が、一番見やすいって言ったけど、何が楽しくて虫を見に行かなければ行けないのか?
そうでなくとも、ハニーとの甘い時間が削られたと言うのに…
ロイドの事になると、俺様何て心が狭いんだろ
思わず溜め息が零れていた
でも、そんな様子の俺様をロイドは気遣ってくれて、俺様が気を落としてると、つまらないって、言ったんだ
愛されている気がして、沈んでいた心が浮き立つ
ああ、何て簡単な俺様…
そして、俺様はロイドに手を引かれて、仲間たちと螢見物に至っている
「スゲー」
「うん、綺麗だね〜」
目の前には、幻想的な点滅する光り
言われなきゃ、虫だって気づかない位美しい光景が広がっていた
これで、二人っきりとかなら良いのに…そんな事を思って居ると
「な、ゼロス、来て良かったな!」
不意に俺様の服の裾を掴んで、ロイドが笑いかけた
「あ、ああ」
伝統の浴衣と言う服装の為、いつもは隠されている項が、夜目にも白く浮き上がってドキリとする
そんな、無防備なハニーの破壊的な魅力に、俺は目眩すら感じた…
此処は外だとか、皆居るとか、自分に言い聞かせて、疼く欲望を理性で押し留める
「何時までも見飽きないけれど、キリがないからソロソロ帰るかい?」
ナイスタイミング!
しいなの言葉が、俺の意識を現実に引き戻した
「そ、そうだな〜お子様に夜更かしは良くないもんな」
俺は理性を保つ為に、ロイドからあえて視線を外しながら、しいなの意見に同意した
「え〜まだ見ていたいよ!」
そう、続けるジーニアスとロイドに
「そうね、あまり遅い時間では無いけれど、もう2時間以上此処に居るもの。帰りましょうか」
決断において、絶対的な権力をもつリフィル様の一言が発せられた
「でも…」
それでも言い淀むロイドに
「ロイド、そんなに見ていたいのなら構わないけれど、ここで帰らなければ、明日螢についての課題を出すわよ」
天使のような美しい笑顔で、リフィル様は言い放ち
「うぇ…マジかよ」
ロイドは、しぶしぶ帰宅を承諾する事となった
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