novel

□…約束…
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「……」

「………」

朝の光は美しく、朝食も旨そうな香りを立てている…が、いつになく、ワイルダー邸の空気は重かった
其もその筈、数日前にパルマコスタが炎上した。ロイド・アーヴィングが血の粛正を行ったのだ…いや、正確にはロイドを騙る何者かによって…だ。
俺様とロイドが、パルマコスタの異変に気付いて駆けつけた時には既に、街は燃え人々の悲鳴があがっていた…。

その日から、ロイドの様子がおかしい。
落ちつきが無いっつーか、食欲が無いっつーか…
まぁ、自分がやっても居ない事件で、悪者扱いされたんだ、苛立つのもわかるが、その他に何か気になる事が有るようなのだ。

「…っ…ゼロス…」

「はいよ」

思いつめた様な苦しそうな顔で、ロイドが食事する手を止め俺様を呼んだ

「…別れよう…」

「へ?」

…今…ロイドは…何と言った?

「…別れよう、ゼロス…」


ガシャン!


「そんな!」

言葉を理解出来ず固まった俺様の代わりに、セレスが叫んだ

「ロイドさんに見捨てられたら、お兄様はには…何も残りませわ!コホッコホッ」

いやいやセレス…何も残らないってのは酷いだろ…
咳こんだセレスに近づき、ロイドはそっと水を渡す

「ごめん…言葉が足りなかったな…別れるんじゃ無くて…少し別行動したいんだ…」

「…俺様が足手まとい…だから?」

そう言うと、キッとロイドに睨まれた。…こう鋭く睨まれたりすると、父親に似てきたな…なんて観察してみる

「足手まとい何かじゃ無い!…ただ…」

「ただ?…」

言い淀んだロイドに、先を促す

「ごめん…言えない」

「ふうん…俺様に…言えない事か…信用無いんだな」

寂しそうに呟けば

「そうじゃ無い…約束…したんだ…」

苦しそうに吐き出した

「誰と?」

俺様にも言えないってのが引っかかって、問い詰める

「……」

「…黙りか…」

重苦しい空気が流れた

「ご馳走さん、ロイド部屋行こう」

俺様はロイドの返事を待たず腕を掴み、自室へ上がった



パタン

扉を締め、ロイドと向き合う


「ロイド」

「………」

頑なに口を閉ざし、ロイドはうつむく
ロイドの態度は気になるが、追い詰めたくはない。言えないのは、其なりの理由が有るのだろう…信頼してるから、これ以上は訊かない事にした

「まあ、ロイド君が話せ無いって言うんなら、追求はしねーけど」

「…ごめんなゼロス」

何時から別行動?と聞けば、明日にでも出発したいと言う返事が返ってきた…

今日話して、明日出発ねぇ…

「そんなに急がなくちゃなんねーの?」

近づいて、覗き込む様にして問いかければ

「ああ…」

ロイドは間髪入れず、キッパリと頷いた

…正直、面白く無い…

俺様はロイドの髪に触れ、輪郭をなぞりながら頬に手を添えて、キスをした

「…んっ…」

初めは照れて嫌がってたりしていたが、近頃は素直に受け入れてくれる
ごく稀にだが、自らキスをしてくれる事だって、有る仲にまで発展した…

俺様はサスペンダーを下ろすと、服の隙間から手を差し入れた
途端に身を捩って、逃げようとする



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