novel

□心の声
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ピチャ クチュリ

室内に、耳を塞ぎたくなるような水音が響く

「はっ あ、あぁ 」

己の呼吸音が、やけに大きく聞こえた

瞳は見開いているのに、何も見えなくて

苦しくて、辛くて涙が溢れだす

「もっ…止め…ろっ…」

途切れ途切れに、何度目になるか解らない、抗議の声を上げるが、ゼロスは一向に気にする様子は無い
それどころか、さも楽しそうに歪んだ笑みを溢し、突き上げを強めた

「あっ…ああ!」

自分の声とは思えない、高い声が出る
悔しくて、唇を噛み締めた…と、ゼロスは、優しいキスをして、宥める様に髪をすく

訳が解らない

俺が苦しむ行為を、強要しているのはゼロスだ
なのに、何で優しい仕草で宥めるんだよ



なあ



お前は何が、したいんだ?


俺は



俺は、お前を救いたい



『心の声』




始めて会った時は、はっきり言って好きでは無かった
チャラチャラしていて女の子を所構わずナンパして、何故コレットが、シルヴァラントの神子だけが苦しんでんだって、思っていた

だけどあの雪の日

ゼロスの…、繁栄世界の神子である苦悩、母を殺され、感情を抑え生きて来た、事実を知らされて…
お前が俺に見せた、気持を大切にしたいと思ったんだ

だってさ、それって、俺を…信頼してくれたって事だもんな

俺、嬉しかったんだ

何時も感情を抑えてたお前が、自分の言葉で、苦しかった事を告白してくれたんだもんな

それからだったかな?お前は、素直に思った事を言って、偽りない笑顔を見せてくれていた

だから、俺も、俺ができる限りのやり方で応えてきた



……多分、俺、お前の事…好きになってたんだ……



……なのに……





今日は運良く、宿に泊まる事ができて、俺とゼロスは同室になった
近頃同室になると、夜中に抜け出してるから、理由を聞くチャンスだと思ったんだ
だってそうだろ?また何か独りで、悩んでんだったら友人として、助けになりたいって思うだろ?

だから、風呂に入った後、ゼロスに直球で聞いたんだ

「ゼロス」

「何かなハニー」

「近頃、何か隠して無いか?」

「な〜に言ってんだよ?俺様ハニーに、隠し事なんて一つもしてないぜ?」

へらへらとした、何時もと変わらない返事だったが、一瞬表情が固まるのを俺は見逃さなかった

「嘘だ」

俺はゼロスに詰め寄った
途端に、ゼロスが一歩引く
…何だよ、皆の前じゃウザい位に抱きつついて来るくせに…

「何で逃げるんだよ?」

俺は更にゼロスに近づいた

「いや〜なんつーか、ははは」

尚も俺から、離れようとするゼロスの腕を捕まえると、ビクリと体が震えた
何だか、何時もより熱い気がする
もしかして、具合が悪かったのか?

俺の検討違いな思考をよそに、ゼロスが低く呟いた

「…離せ…ロイド」

「なっ…」

人が心配しているってのに…、反論しようと口を開く前にゼロスか、絞り出す様に言った

「…でないと」

「でないと?」

俺は、ゼロスを覗き込んだ
熱に浮かされた様な、でもヤケに鋭い視線と目が合う

ヤバイ!



何がヤバイなんて分からないけど、本能的に危険を感じて、俺はゼロスから離れようとした
しかし、それより早く今度はゼロスが俺の腕を掴んだ




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