†幻想物語†
□†空と罪†
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第一章 †罪†
静かに、目を閉じた。
呼吸を止め、湿った大地を蹴る。
ゆっくりと広げた翼は雲の隙間から射す光に煌めく。
全身を包む柔らかな大気。
体は宙に浮いた。
この瞬間だけが彼を全てから解放する。
与えられた翼。
与えられなかった腕。
異端の存在。
「化物」「奇形児」
そんな声が耳から離れない。
彼の居場所は誰も届かない
この空の上だけ。
人々は理想を描く。
神に選ばれし者は、完璧を備えた者だ、と。
一つでも欠ければ、それは自分達を惑わす悪魔めいた畏怖の存在だ、と。
両腕の無い彼。
代わりに真白な翼。
美しいと思うだろうか?
醜いと思うだろうか?
人々は翼を欲しがる。
腕を持つ鳥はいないのに、人々が崇める天使には腕がある。
彼は腕が欲しかった。
その体では皆と同じ生活は出来ず、迫害の標となるだけだから。