【cool,boy】No.1


□【心…】
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エルモス事務所の受付に 一人の美少年が立つ。



「…あの」


「はい?…え?…あなたは…」

受付の女性は 声をかけてきた人物を見て驚いた。


「ひ…光君!?」

「…すみません…相模原未優さんのマネージャーの 森下辰也さんはいらっしゃいますか?」

「えっ?…森下さんですか?…少々 お待ち下さい…」


受付の女性は 受話器を取り 内線番号を押した。



「…はい…あの森下さんにお客様です…はい……あの…モデルの光君…です……あっ…はい…はい……」


チン…


受話器を置き 女性は笑顔を向けて 玲に言ってきた。


「…今 森下さん 降りてきますので そちらの雑談室にてお待ち下さい」


「はい…ありがとうございます」


玲は 雑談室の中に入って行き ソファーに腰掛ける。


「コーヒーです」


「あ…ありがとうございます」


玲は 今更ながら ドキドキしてきて 小さなため息をついた。


「…はぁ」

(…こんなことして…バレたら 速水さんに怒られるかな?…でも お見舞いに行けないなら…マネージャーさんに頼むしかないし…)



カチャリ…

「光君?」


雑談室に 森下辰也が入って来たが 心なしか心労気味で 暗い表情をしていた。


「…森下さん…忙しのに 突然すみません」

「いや…それより どうしたの?」


「…相模原さんの お見舞いに行きたかったんですが…事務所から止められたので………だから…森下さんに お見舞いを渡してもらおうと思って…」


玲は そう言って 大きな包みを机に置いた。


「…未優に…これを…?」


森下は驚きの表情で 玲を見た。



「…ありがとう…光君…未優に渡すよ」


「…お願いします」


「未優が…どんなに喜ぶか…ありがとう光君」

「…怪我の方はどうなんですか?」


「…複雑骨折でね……若いから回復は早いと思うんだが…精神面で少し…」


…と森下はチラリと玲を見る。

「!」


「…誰かが(光)心の支えになってくれる人がいるといいんだけど…」


「……」

(森下さん…)

森下の強い眼差しを受け 困惑してしまう玲。



「…光君…少しの間でいいから…未優の恋人になってくれないか?」


「えっ!?」

森下の発言に 驚く玲。

「…わかってる…マネージャーらしからぬ発言なのは…でも これ以上 未優の悲しく…辛そうな顔を見ているのが嫌なんだ…あの…明朗快活な未優に…早く戻って欲しい…それには光君が…頼むよ」



「…森下さん……ごめんなさい……俺…同情で…相模原さんの恋人にはなれないです………」

(森下さん…相模原さんを大切にしてるんだな…こんな事言うなんて…でも…偽の恋人だなんて…)


芸能人同士の恋愛は 若いうちは御法度で どの芸能事務所でも たいてい禁じている。

エルモス事務所・トワイライト事務所もしかりである…


「ああ…光君…ごめん…俺は何を言ってるんだか……頭がグチャグチャして……未優の事 全然守ってやれなくて…マネージャー失格だな………」


森下は頭を抱え 自嘲気味に言う。



「……森下さん…俺は 森下さんはタレント思いの素晴らしいマネージャーだと思います」

玲は 優しい笑顔で 森下に言った。



「!」

森下は一瞬 目を見開いてから 何かを悟ったのか目をゆっくりと閉じて 穏やかな声で話し出した。

「………光君…ありがとう………そして…すまない……無理なこと言って………未優が…光君を本気で好きなら 未優自身でアタックしなければ……俺がお膳立てしても 意味がない」


「…森下さん」

森下が 穏やかな表情を取り戻したのを見て ホッとする玲。


「…光君…今 未優は芸能活動でも 私生活でも苦境に立たされている……未優の良き友として 支えてくれないか?」


「?…はい…それはもちろん…」

(芸能活動の苦境…?)


相模原未優の 芸能活動の苦境…

それは 岡崎真利亜の陰謀によってもたらせられたものであるが 玲はもちろん 森下さえも知らなかった。




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