【cool,boy】No.1


□【蒼の館】
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ざわざわ…


10人くらいの劇団員が 海老根のもとに集まって来る。


「みんな 紹介する…今回 トワイライト事務所から客演することになった モデルの光君だ…今日から稽古に合流する」


「「!!(ギロ)」」



劇団員 ほぼ全員の目が 刺すように玲を見る。



「…大柴 学 役の光です 本日からよろしくお願いします」


挨拶をし 頭を下げた 玲の手は 小刻みに震えていた…


「………」

(ヤバイ…あんな目で見られたのって久々だ…)


「…今日から立ち稽古に入るが…光君のためにも右端から名前と役名を言ってあげなさい」


「「はいっ」」


劇団員が次々と挨拶と名前と役名を言ってゆく。



みな 名前をいいながらも 目だけは挑むようなきつい眼差しだった。



最後の一人が 終わると同時に 海老根は話し始める。


「…では立ち稽古を始める!」

劇団員が台本を持ち わらわらと散る。


「ん?…光君…台本はどうしたね?」

海老根は忘れたと思い 呆れた顔して玲を見る。


劇団員もそれを聞き 嘲笑する。


「くす…」


「台本忘れ〜?」


だが…


「え?…あ…台詞全員分 覚えてしまったから…いらないかと思って車に置いてきたんですが…すみません…必要だったんですね…」


「「!?」」


「何だと?…確か台本は昨日届けたはずだが…?」

「はい!!今日の朝貰いました」

「朝…」

海老根は呆然と玲を見た。

「……変更とかあったらどうするつもりだ?…自分じゃなくても…他の役の人の分とか…台本に書き込まなくてはならんだろう?」


「え?…頭の中で記憶すれば…別に問題ないですよ?…忘れないですし…」


玲は不思議な顔で言う。


「…そうか」

(何なんだ?…この子は…天然なのか?…それとも…逸材なのか?)



劇団員はやっと今…『本読み』を終え 今日から『立ち稽古』をしつつ 台詞を覚えて 登場人物になりきる。


…光のもとに台本が届けられたのが朝…

本読みもなく いきなりの立ち稽古…かなりのハンデがあるはずだが ……ほぼ半日で台詞が全部頭に入っているなどとは 到底信じられない事である。


「「………」」


今のことは劇団員の中でも 驚きを隠せなかった。



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