少年部屋
□僕だけのヒト
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「……」
「…何だ?」
「…えっ!や、何でもナイんですけど……番傘なんだ」
待ち合わせた、雨の日の雑踏。
その中に、簡単に先輩を見つけられたのは。
その小さめの頭が、やっぱり一つ抜け出していたから。
それから…俺の『恋心レーダー』のお・か・げ!!
…なんて。ちょっとキモっぽいコト言ってみたいんだけど。実際のトコはやっぱ…目立っていたからだ。
特有の傘の具合が…。
「……」
わぁ…。
「ねぇ。見てあのコ…渋っ!」
「え?でもよく見たらカッコよくない?声かけてみようか」
…『俺の』先輩なんだから。どっか行け!
「なに!何か隣のコ睨んでない?こっわ!」
「あ〜ホントだ。あのコも可愛くない?」
うるせっ!
俺はギリギリと噛み付く勢いで睨んでやった。
「なにアレ!行こっ。」
「う〜ん、せっかく可愛い&カッコイイ二人なのに。声かけづらいよね、色んな意味で」
勝手なコトばっか言って、俺らをジロジロ見ていた女二人がようやくどこかへ行った。
「……こら」
コツン、と。牙を剥いて二人を睨んでいた頭にコブシが落とされた。
「あイタ!」
「なんて顔をして人を見ているんだ」
だって…。先輩のコト。イヤらしい女の目でアイツらが見てたから。
先輩は俺の大事な人なんだから!見ないでよって触れ回りたいの我慢してんのに。俺だって緊張して未だにマトモに見れてないんだから!!って。
あの二人は『女』ってだけで平気で目を輝かせてニコニコすんの許されてんだと思ったら面白く…なかったんだもん。
「……先輩が」
そう。
「…ヘンな傘さしてて…よかった」
「……」
ちょっとムぅ、っと先輩が眉を顰める。
「…や!ちょっと違った」
「珍しい…傘と先輩がよく、似合う…から」
だから俺は、あの人たちが声を掛けてきて。隣でなんだかイライラしたり。寂しい気持ちにならなくて…済んだ。
「……ふっ」
「あ!なんで笑うの」
ザーザー、雨粒が俺の透明ビニール傘に当たって落ちていく。
「…赤也が、」
「…俺が?」
なんだろ?って首を傾げて見上げたら
「…何でもないよ」
そう言って一度、俺の頭を軽く撫でた。
「え?なになに!」
≪終≫
2005.9.30
→あとがき