閑話

□an afterimage
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張り付く起爆札がその身を砕くことは必至。
敵の術中に自由を奪われ。

足元に広がるは限りある奈落。
空は何処までも知らぬ顔だった。



「奈良家の息男、そいつが猿飛アスマを亡き者にした張本人か」

「!…そうです」

「…そうか。お前にこいつを背負う覚悟はあるか」

「あります」



背面から声を聞いた。
チャクラは感じられない。

横目で確認すればその顔には動物の面。
それは暗部の証。
聞いたことのある声だった。


この後、不死身の彼の者は火の意志を継ぐ者に埋葬されることとなる。












風が喚く。
遥か上空で鳶が鳴く。

この数年で随分と仲間が死んだ。
そして、その倍ほどの敵が死んだ。

敵、味方。
この区別はあまり好ましくない。
少なくとも俺にとっては、だけれど。



カチリ。

遺品のライターは未だ健在。
彼の所持していた煙草の最後の一本に火がついた。
慣れないままに吸い込めば口腔内に広がる不味い味。



「…苦」

「ア、スマ…」



前面から声を聞いた。
まあ、チャクラを感じたからコレをふかしたわけだけれど。
一直線上で視線が交われば張り付く驚駭、後の後悔。
彼には人を気遣う余力がある。



「残念だが、…俺はアスマじゃあない」

「、すいません」

「義兄が…」



耳にキラリと光るピアス。
それは義兄・アスマの教え子だった証。
見たことのない表情だった。





「公私共に世話になった」





これがどの程度伝わるかは計り知れない。
云ってみれば目前の少年次第ということになる。
いえ、続く言葉が掛ける言葉が見つからなくて焦燥。
気まずい沈黙。



「    、     」



空風にも似たひどく乾いた風が二人の曖昧な間を完全に別離させる。
少年が反応する前に青年は姿を消した。
本体を失くした紫煙はもうじき霞む。








an afterimage

-その姿、偽者-




(一度目は亡き師の、二度目は恋人の義弟の)

(三度目は瞼の裏に彼の後姿を見た)

(もうどちらかわからない)

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