脱色夢

□月喰
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見上げた現世の空は尸魂界とは似ても似つかぬ澱んだ紺碧。
地上のネオンライトの目映い明るさに負けた恒星に輝きは見受けられない。
子供の頃はもっと沢山の星々が意識せずとも視界に飛び込んできたものだったが。



「…今晩は月食、か」



赤黒い鈍色に発光する月。
この不気味で幽玄な自然現象に如何程の人間が気付くと云うのか。
そんな感性はとうの昔に衰退してしまったかもしれない。



「貴様、死神…ダな」

「ああ」

「オレらに出会っタのが貴様の不運ダッ!」



文明開化、そう言えば聞こえは良いが現実は汚ならしい欲と見栄の塊に突き動かされた結果。
便利になったと現代の者は手放しに喜んでいるが果たしてそれは如何なものかと思う。
もしかしたらこの感覚は自分が死者であるがゆえの価値観かもしれないからなんとも複雑だ。



「ッ!?」

「動けないだろう!コれがオレらの能力!」

「!く…っ(何処も動かねぇ!)」

「あの世で後悔するんダな!」



尸魂界はいくら時間軸が変わろうと本質・様式は一切といっても良いほど変化は感じられない。
希に現世のもの取り入れている者も居るが全員が全員というわけもなく、ごく少数派。





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