復活夢

□錆びた蹄鉄が蹴り上げる
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蒼白い月が夜の空を照らす。
震える唇から吐き出される白い吐息。
すっかりこの辺りの景色も冬仕様に様変わりしてしまった。





「ししっ、やっぱここに居た」

「ベルフェゴール、おかえり」

「それさっき聞いたし」

「じゃ、ようこそ」





屈んでいた上体を起こし腕を広げる。
満月の月を背景に今は深夜。
夜の空間は我々殺人鬼の最高の環境。


白昼堂々と殺ったこともあるがそれは極稀。
最終的には闇夜が最適という回答に辿り着く。





「何ソレ」

「俺の世界にようこそみたいな?」

「聞かれても分かんねーよ」

「夜は俺のテリトリーさ」





真顔に相対するシニカルな笑み。
これは10年来のもので不変的に近い。
豪華絢爛な談話室のテラスの手摺に全体重を預け漠然とベルフェゴールの顔を眺めた。



任務帰り。確か裏切者の殲滅。
至るところに飛び散っている返り血。
隊服に飛んだものは布地に吸収され表皮に付いたものは乾いている。


黒い。紅い。黒い。





「ベルフェゴール」

「何」

「汚い」

「しししっ、本人目の前に言うかふつー」





にかっと綺麗に整った歯が外界に晒される。


白い。光る。白い。





「折角の顔が台無し」

「それはどーも」

「洗って来て」

「言われなくとも後でちゃんと洗うっつーの」

「駄目。今すぐ」





いつにない強い口調に口角が引く付いた。
機嫌が傾いた証拠。
ここで引き下がるほどお優しくはない。
白さは何時でも何処でも白くなければならないのだ。





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