復活夢

□無味無臭のアペリティフ
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ガシャーン。



食器の割れる派手に高い音が食堂に響いた。
又か、そう思うも口に出すことは憚られ終始無言に終わる。


決して食事が不味いわけではない。
敢えて問題点を指摘するとすれば、幹部はそろって食事を取るという制度。




「何だこのクソ不味い飯は」

「申し訳ございません。アル、片付けを」

「っ、は…い」




正確に言えば任務があったりなかったりと全員が集まるということは滅多にない。
それでもこの屋敷に居る幹部は決まった時間にここに召集される。


怒りんぼのボスが薙ぎ払ったスープ。
見習いのコックが欠片を拾い集めている。


一杯口に含んで咀嚼。
そして、嚥下。


上手い。
普段とは違う味付けのようだがこれはこれで美味しい。





「塩が濃すぎる。肉が死んでる」





生肉なんて入れませんよねー。
言葉は野菜と一緒に胃袋へ押し込む。
火の粉が降りかかるのだけは御免だ。




「畏まりました。では、こちらに新しいスープがございます」

「ど、うぞ…」

「(あーあ、怯えちゃって。可哀想ですねー)」




次に出されたスープは文句はなし。
ということはボスの舌が満足したらしい。



チラリと盗み見たスープは表面上ミー達のとなんら変わりなかった。
同じ物かと勘繰ったが、恐れ多くも切れ易いボスにそんな自殺行為をする者は居ないと判断。
アレは別物だ。




「アル、片付けが済んだら下がりなさい」

「ルイ」

「どうぞ、XANXUS様」




上物の赤ワインがグラスに注がれる。
一切の無駄を省かれた洗練された動作。
やはり暦が違う。


震える見習いは脱兎の如く走り去るかと思いきや。
ゆっくりと音を立てないよう退出。
そのくらいの配慮は残っていたのか。





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