復活夢

□マトリョーシカ限界点
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電話の呼び出し音が鳴る。
慌てて受話器を取れば鼓膜に響く低音。
機会越しなのだから相手に此方の状態が分かるはずはない。
それでも向こうの彼は何でも見透かしたように喉の奥で笑う。




『そんなにがっつかなくても良いだろ』

「がっ、ついてなんか…っ」

『はは、良い良い。…これから、大丈夫か?』

「!…す、ぐ行く」




時間と場所を簡単に告げるとあっさり切られた。
ものの数十秒。無理もない。
彼にとって自分はその他大勢の中の一人にしか過ぎなくて。




「ボス…又行くのか」

「ああ…次はいつになるか、分からねーし」

「…諦めるってのは「分かってる!!でも…っ」




ロマーリオは単純に心配してくれているだけなのに声がどうしても荒がる。
この頼りになる部下からはまだまだ子供に見えるのだろうか。
それとも、愚かに見えているのだろうか。
はっきり言ってくれない分余計に勘繰ってしまう。




「あいつが、好色なのは…十分知ってるさ」

「ボス」




続きを発する前にこの場から背を向ける。
続きなんて容易に想像がついた。
結局ここの奴らは皆優しい。
そして振り向かないのを咎めることなくロマーリオは微笑むんだ。




「ここはまかせとけ」

「…ありがとな」














人出の多い街角。
既に待ち合わせの時刻は過ぎている。


しかしルイが遅れて到着するのはいつものこと。
突然の呼び出しもまた然り。


自分のスケジュールもきつきつではあるが彼も何かと忙しい身の上。
只単に時間にルーズと言うこともあるが。




「ディーノ」

「!ルイっ」

「悪ぃな、遅れた」

「いつもだろ。今更良いって」

「ん、ありがと。相変わらず優しいな、お前は」




するりと実にさり気無い動作で頬を撫で上げる。
少し低体温気味の骨ばった手の平。
火照った頬には丁度良かった。





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