復活夢

□マトリョーシカ限界点
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遅れた御詫びに昼食を奢ってくれると言う。
これもいつものパターン。
だが連れて行かれる店は常に違う上に好みにあっているから不思議だ。


心の中を覗けるのではと疑いたくなるぐらいにぴたりとはまる。
その日の気分的に食べたくないものに限ってその日は避忌。
まさに絶妙なタイミング。
きっとそういうところが好かれるのだろう。




「あ、ルイー」

「…サブリエ」

「この前のやつ、ちょー良かったあ。だから…次も、ね?」




香水の香りが強く化粧も濃い。纏わり付く。
ルイはこんな女性が好きだったのだろうか。
無意識に目付きが悪くなってる気がしてならない。



嫉妬。嫉視。妬心。
彼が最も忌み嫌うもの。


と同時にこちらが抑えるべきもの。
表に出すとしたらそれは別れるという合図。
暗黙の了解。




「お前さ見て分かんねェの?俺は今コイツと居んの」

「っ、ごめんなさいッ」

「俺、約束守れない奴はいらねェんだけど」

「ま、待って!次から気を付けるからっ」




すっとルイの目が冷めていくのが分かる。
真横から見てこれだけ伝わるのだから正面からなんか凄いはず。
周りの視線を一身に浴びている彼女は彼にとって見せしめ。


この360°を取り囲む一般市民の中に彼との交際している者が何人いるかは計り知れない。
というより触れてはならないタブー。
だけれどこの中には確実に居る。
同じ想いをしている者が。




「ルイ!今居るのはオレだろっ、早く行こうぜ」

「…コイツのせいで萎えた」

「え?」




往来のど真ん中にもかかわらずしな垂れかかってくる。
態とか否か。
突飛な行動も毎度のことではあるがこんなことは初めてだった。


ルイの腕の中にすっぽりと納まった身体では身動ぎ一つ出来ない。
彼も頭の上でうーうー唸ったまま。
空気が固まるという比喩を体感した瞬間だ。





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