復活夢

□偽装現象
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カコン。
添水が溜まった水を吐き捨てて石を打つ。
再び水が筒の中に受け取られる。


カコン。
許容を越えればやはり内容は洩れ軽くなった竹筒は石を打つ。




「湊さん、入って良いっスか…?」




修行時に着用している着物姿のまま障子の前に膝をついて中に声をかけた。
気配がある以上障子の向こう側に湊が居るのは確実。
物音一つ聞き漏らさないように耳を研ぎ澄ませる。


暫くして返事の代わりに聞こえたのは筆を置くひどく小さな音。
滅多に口を開くことのない彼の了解の証。




「失礼します」




静謐な雰囲気を崩さないよう慎重に障子の下方に手を添えて開けた。
山本と同じく着物に身を包んでいる湊。
和を好む彼が追求に追求を重ねた空間に成程よく溶け合っている。




「湊さん、今日で修行一応一段落ついたんスよ!」

「…」

「まだ明日の早朝に確認をやるみたいなことスクアーロは言ってたけど」

「……」




以前に途切れ途切れになるから喋るのは余り得意ではないと言っていた。
そのためか湊は滅多に言葉を発しようとしない。
だからと言って話を聞いていない訳ではなく。



言葉の代わりに彼は目でコミュニケーションを取ろうとしてくれている。
端から見れば片方が一方的に話し続けているように見えなくもないが実際のところは違う。



湊はこれで良いのだ。





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