復活夢

□I pray a fool in there.
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放課後の教室。
窓枠の向こう側。
茜色の空と山吹色の雲。
夏に比べて日の入りが早くなった。




「ほらよ、ダメツナ!掃除頼んだぜ」

「ええっ?こ、困るよ。オレ今日用事があって…」

「うわ、こいつダメツナのくせに口答えしやがった!」

「ダメツナはダメツナらしく掃除押し付けられてろよ!」




ゲラゲラ笑いながらクラスメートは教室を立ち去る。
残されたのは綱吉ただ一人。


浮かぶ表情は困窮、かと思いきや。
その顔に貼り付きたるは嘲笑。




「…ほんと餓鬼だな」

「お務めお疲れ様です。ボス」

「湊、見てたのか」

「はいバッチリと。…掃除、やっときましょうか」

「いや、いい。これぐらいわけない、それより」




男にしては多少大きめな瞳が湊を凝視する。
視線だけで理解することを求めた。




「?…あぁ、綱吉」

「何」

「いつまで猫被るつもりだ。正式な守護者にもばらしてないんだろ?」

「…このオレを知るのは湊だけでいい」

「そ」




照れ隠しなのかそっぽを向く綱吉。
橙が顔と重なって交じった。
無造作に垂れ下がった片腕を手にとって。
その甲に口付けを。




「…キザ」

「前からやってみたかったんだよ」




小さく含み笑い。
その二人の笑みに嘘偽りはなく。
先程の嘲笑は陰も形もない。







「湊は特別だから」

「身に余る光栄でございます」




丁寧な物言い。
僅かに眉を顰めた。




「誤魔化すな」

「ふっ、俺も綱吉は特別だぜ?」




日は落ちた。
藤と藍が空を支配。
朧月が東の天で微笑む。






I pray a fool in there.

-全ては周りが愚者であるがために-






(君と俺)

(狭隘な世界に満足する)

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