復活夢

□儚くも散りゆく貴方に謳う恋唄
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「白蘭サン」

「お、湊チャン。お帰りー」

「聞きましたよ。あのボンゴレ霧の守護者と戦ったそうですね」







かつかつと靴を鳴らしソファに座っている彼へと足早に近寄る。
その度に高く結ってある髪が左右に振れ。
湊の首元をくすぐった。



自身とは髪色も髪質も正反対な漆黒の絹糸に見惚れたのは今日だけではない。
本人は特に手入れはしていないと言うが。
自然に絡まることを知らないそれは本物の絹糸よりも貴重な。







バンッ、バインダーが湊の手によってテーブルに叩きつけられた。
責めるような視線にも何処吹く風。
白蘭は普段と何一つ変わりない笑顔を返す。







「うん、そうだよ。なんだ、意外と早く知られちゃったな」

「いつも言っているでしょう。少しは部下の意見も仰いで下さい、と」

「湊チャン心配した?」

「…そこまで言わなきゃ判りませんか?」

「判んないなぁ。だって湊チャン何考えてるか表情に出ないんだもん」







それは貴方だろうに、口に出す一歩手前でその言葉を飲み込んだ。
そうしなければこの論争は一向に終わりを迎えないだろうから。
無駄な時間を費やしているほど自分達に時間は無く。












「あァ、心配したぜ?白蘭」






タメ口は私用の合図。
従順な部下から俺様な恋人への転向。



テーブルの向かいから白蘭の隣へと移動する。
勢いよく座った拍子にソファが小さく悲鳴を上げた。
それくらいで壊れるほど柔ではないけれど。







「この指が、この手が、この腕が」







緩慢な動作でその部位をなぞり。







「この身体が危険に晒されたと思うと」







片手は抵抗も何もしない手を掴んだ。
もう片方は傷一つ無い頬へと滑らした。



二対の瞳が真っ直ぐ交錯する。
お互いの真意はひた隠しにして。
ごくごく自然な動きで閉じられる。








後ろでダチュラの花が一つ。



落ちた、気がした。








「寒気がする」

「僕って愛されてるんだね」

「気付くの遅ェよ。バーカ」

「…恋人に対して冷たくない?」

「ほー、一応恋人だって自覚あったのか」







喰えない笑みに対抗しての嘲笑。



彼に効果は、全くナシ。

むしろ、







「、!?…っ、…ん」

「っは、…。湊チャン以外を恋人と認めた、覚えはないよ」







煽るだけの結果となったようだ。







後ろでダチュラの花がまた一つ。



堕ちた、気がした。







儚くも散りゆく貴方にう恋唄

-愛シテル-







(伝わっていて、通じない)

(通じていて、見えない)

(見えていて、伝わらない)

(この矛盾が堪らなく愛しくて)

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