復活夢

□朱華
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「人、多ッ」








朱、黄、茶。
色とりどりの変化を遂げた山に辿り着いての第一声。
辺りを見れば人、人、人の群集の嵐。
連れて来た湊も若干引き気味である。
意を決して満員電車並みの人ごみに身を滑らせた。








「チッ、全然進めねェじゃねーか」

「獄寺、こっち」

「っ、わ……!」

「このまま先の角を右に曲がれ。近道だから」








雑踏を掻き分けていた一瞬、肩ごと湊に抱きこまれた。
それは周りが気付かぬほど少しの間だったけれど。
周囲の声に負けないよう耳後ろに唇を押し当てんばかりの近さで喋る。
吃驚するぐらい真面目な彼の声音に背筋が疼いた。







「っ///耳元で喋る、な!!」

「悪ィ…。ほら、行くぞ」








手をひかれるがままに角を右折し、山を登っていく。
近道と言うだけあって歩む道は急勾配。
他に人は居なかった。



先導しているのだから彼の表情は全くこちらからは見えない。
それでも時折見せる凛々しさに、さっと頬を染める。
どうしてもその姿を湊に見られたくなくて、顔ごと俯いた。
すでにあられもない姿を彼に晒してるとしても。












「獄寺、着いたぞ」

「ったく。やっとか、よ…」







視界が開けた先にあったのは色鮮やかな木々の群れ。
思わず出かかった文句すらも首をすぼめ、ただただ眼下に広がる景色に声を失った。



時間帯もまさにピッタリ。
日が傾きかけ全てを朱で抱き締める。
それが紅葉の紅さに拍車をかけた。
彼から一歩下がった所に湊は立つ。
その顔つきは複雑なもの。









「本当に、…ここに来て良かったか?」

「はあ?今更何言ってんだよ」

「今まで…こんなのしたことねェから、さ」








振り向いた顔を訝しげに歪めて。
一直線に湊と対峙する。
意外にも先に視線を逸らしたのは湊の方だった。
綺麗な夕焼けがやけに痛く感じたのは気の迷いか。









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