復活夢

□朱華
3ページ/5ページ


「あ、獄寺。今度の休みに紅葉狩りにでも行くか?」

「………は?」

「湊、…大丈夫?」

「ンだよ、その反応」

「いや。テメェがそんな事言うなんて、今日は槍が降るんじゃねぇ?」

「ちょ、獄寺くん!」

「…殴るぞ、テメェ」









わなわな震える拳は隣に座っている山本の手によって諌められた。
ちなみに湊は山本と獄寺の間に位置している。
こうでもしないと、獄寺の一方的な睨み付けが始まり飯が不味くなることこの上ない。








『獄寺は素直じゃないから、湊が我慢をしなって』

「(ったく、メンドくせェ)…ま、いいけどよ」








ガタ、学校のイス独特の音をたてて立ち上がった。
こんなちっぽけな音は教室のざわめきに見事飲み込まれたけれど。
獄寺の驚いたように見開かれた澄んだ瞳<め>と彼の人工的な目とがぶつかる。



彼の言葉か、はたまた行動か。
どちらにせよ湊が原因であることに違いはない。
無論、驚いているのは獄寺だけでなく。
山本、綱吉も同様に動作がピタリと止まっていた。







「お前、本当に大丈夫か…?」

「何がだ。俺はもう帰っから、明日までに行くか行かねぇかはっきりさせとけ」

「、誰もっ…行かねぇなんて、言ってねーだろ…!」

「そ、良かった。んじゃーなー」








彼らに背を向けた状態で手だけをヒラヒラと振る。
行きたいと言ってくれて嬉しかったのは事実。
でも、それを大げさに表現できるほど器用ではなく。
例えそれがささやかなプライドにしかすぎないと分かっていても。
素直になりなよ、ルイの声が聞こえた気がした。
















そんなこんなで当日。
朝早く、と言っても現在時刻は午前11時で限りなく午後に近付こうとしている。
しかし低血圧で休日の起床時刻が午後といのが日常化している湊とっては早いのだ。
わたわたと慌ただしく部屋を縦横無尽に動き回る獄寺。
それをぼーっと眺める湊。
どうやらまだ完全に起ききってはいないようだ。








「(そんなに用意するもんあったっけ…)ん?」








正常に働かないなりに疑問を感じ、背後から覗き込んで固まった。
そこに揃えられた道具はどれも必要なさげな物ばかり。








「(おいおいおい)それ、絶対いらない」

「あぁ?紅葉狩りに行くんじゃなーのかよ」

「(えー…)行くけど、てかお前紅葉狩りって何するかちゃんと理解してっか?」

「馬鹿にすんじゃねーよ!紅葉を狩るんだろ?」

「(うっそ、本気かよ…)紅葉狩りってのは紅葉を観賞しに行くことだっての」








未だぶつぶつ文句を零す獄寺を引き摺るように彼宅を後にした。
人生初の紅葉狩りの行方はいかに。








_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ