復活夢

□朱華
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友人に連れられてやって来たのは無人の屋上。
昔からの付き合いながら、彼の突然の行動はさして気にもしてないようだ。
太陽が燦々と降り注ぐそこは居据わるには眩しい。
丁度良く日陰になっている一部分を見つけて座る。







「湊、獄寺と付き合ってどれ位経った?」

「あ?……一年、かな」

「(長い方、と)じゃ、デートはした?」

「当たり前だろ」








馬鹿にしてんのかと言わんばかりの視線を彼、ルイに投げつけた。
冷たい視線をもろともせずルイは話を続ける。
その表情は真剣そのもの。






「間違った、聞き方を変えるわ。デートとは何でしょう」

「は?ヤることだろ」

「違ェよ」







真顔で漫才をかます彼らは至って真面目である。
即答で否定され不機嫌さを露骨に表したままの湊。
深々と溜め息をつくルイを怪訝そうに見遣った。















「俺、何やってんだろ…」





湊の立ち去ったこの空間にはルイだけが残った。
寝転ぶそこは適度に暖かく惰眠を貪るのに最適な位置。
だが、そんな気分にもなれず。



只、このもやもやした感情を胸に抱え漠然と空を見上げた。
まさに今の気持ちを絵に描いた様な雲が右から左へと流れていた。














『一般にデートってのは、恋人同士が何処かへ行ったり、食事したりすること。だから…』

「って、言われてもなァ…」









困った風に髪を乱雑に掻き毟る。
留処なく流れる人波を避けて恋人が待つ教室へ。
自然と歩む脚が速くなった。








「獄寺ー」

「獄寺くんなら購買に行ったよ。そろそろ帰ってくると思うけど」

「そ。お、焼きそばパンじゃん。うまそー」

「一口食べる?」

「マジ?サンキュー」

「明宮」








パクリとかぶりつき、パンを頬張ったまま振り返る。
さっきぶりに見た顔は相も変わらずしかめっ面。
さも邪魔だとでも言うかのように湊を押し退け綱吉の横を陣取った。
そして、笑顔付きで飲み物を渡す。
もちろん綱吉は飲み物など頼んじゃいない。
満面の笑みに引っかかりを覚えた湊だが最早日常なので気にしないことにした。












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