脱色夢

□ほろ酔い気分に浮かされて
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ある晴れた日の昼下がり。
ふわふわの金髪をなびかせて歩く者が一人。
松本乱菊、十番隊副隊長でもある彼女はある場所を目指していた。





「湊…」





今、彼女の頭に仕事のことなど存在しない。
あるのは






「、…だから一角も弓親もですねぇ…」






彼に逢うことだけ。




障子の奥から聞こえてくる呆れを含んだ笑い声。
開けようとした手が弾かれた様に止まり彼女はその場に立ち竦んだ。
笑い声とは対称的に自身の表情が哀しげなのに本人は気付かない。






「湊ッ!!」






スパーンと気持ち良いほど勢いよく開かれた障子。
もちろん部屋の中に居たのは一角と弓親、そして湊。
まるで自分の部屋のようにくつろぐ二人。
仕事時間中にも拘らず彼らは呑気にも茶をすすっている。
その横では黙々と筆を進める湊の姿も見られた。




三人にとっての日常がこんなにも悔しくて羨ましい。







「あんた達、湊に仕事押し付けてんじゃないわよ」

「隊長に押し付けてるあんたに言われたくねーよ」

「ほんとほんと。日番谷隊長も大変だよねー」

「あたしはいいのよ。それより、おはよー!湊!!」







飛びつくように湊の腕へ擦り寄る乱菊。
当然、仕事に支障を来さないよう左腕にだ。
傍から見れば豊満なその胸を押し付けているかにも窺われる。
明らかに彼も肌で感じてはいるだろう。
でも、






「おはようの時間ではないですよ、乱。また脱け出して来たんですか?」






湊は顔色一つ変えなかった。
流石、と言うべきか。
乱菊に片思い中の修兵あたりが見たら卒倒するであろう光景。
羨ましさと怒りのあまりに。










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