復活夢

□底抜けスパイラル
1ページ/2ページ

春一番が吹きすさぶある薄暮時。
暗がりの路地裏で出逢った。




「っ!?おいッ、大丈夫か!!」




故郷の日本ではそろそろ桜の花が満開を迎えているはずだ。
目蓋の裏に焼き付けたのは若かりし頃。
止めどなく溢れる赤い液体が意識の輪郭を奪い去っていく。




「ロマーリオッ、手伝え!」

「うい!」




頭の中をぐるぐる駆け巡る断片的な記憶の数々。
死にかけると走馬灯が流れるっていうのは本当だななんて。
思ったのも束の間、意識が混濁して声が遠くなった。




そしてこの後人生で初めて献身的な介護というものを受けることになる。







「お、起きたみてーだな」

「…あんたは、?」

「オレはディーノ!お前は?」




目立つが派手とは言い難い透き通る金髪。
ディーノと言えば跳ね馬で有名である。
今時珍しく市民に優しいと慕われるキャッバローネファミリーの若きボス。




「…湊、だ」

「湊な。傷が結構深いからもうちょい安静にしとけよ」




どうやら死に損ねたらしい。
身体中に軋む鈍痛が現実だと知らしめる。


それにしても見ず知らずの輩を介抱するとは彼はどこまで甘いのだろうか。


明らかに非日常的な場所と状態。
そこで見つけたというのに。











「ありがとう。助かった」

「まだ治ってない」

「これ以上世話になるわけにはいかない」

「ならっ、これ」




無理矢理手に握り込まされたくしゃくしゃな紙切れ。
白い中に綴られた走り書き。
ディーノ曰く彼の電話番号とメールアドレスだと言う。




「また…逢えるよな?」

「…善処する」




渋々とした表情を全面に押し出した彼はやはり渋々と見送ってくれた。









_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ