黒子のバスケで7題

□け ろいどにはくしゅを
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会う予定は全く持って皆無だった。
本当にこれは偶然。

本当に神なんているのならば、恨むぜ神様。
そんなもん端っから信じちゃあ居ないが。



「湊、くん…なんですか」

「お前の目に映ってんならそうなんだろうよ、テツ」



感動の再開なんて雰囲気はミクロの欠片も存在しない。
それもあくまでもこっちの都合・解釈による見解であって。
目下の奴が同じ感性を持ち合わせているわけはないのだから同意見は望む方が愚かだ。

“キセキの世代”そう呼ばれる奴らとこんな風に会いたくがないためにこの無名校を選んだというのに。
まさかその六人の中の一人と遭遇するなんて予想外にも程がある。
そして一番避けたかった人物が言わずもがな、黒子テツヤ。

今目の前で元々大きな眼を更に瞠目して静止している少年だ。



「本当に…バスケ、してないんですね」

「あァ」

「、何故ですか」

「愚問だな。知ってるクセに」



瞳が大げさなまでに震えて唇を噛み締める姿は滑稽そのもの。
既に知っていることを敢えて問い、既に分かっていることを理解していない振りをする。
そうやって事柄を誤認させさも自らの意志で発したかの如く体現させる。

こちらは約束を守っただけであり奴に責める権利は初めから有り得ない。
そのことを知っているからこその今の行動であり発言だろうに。

表面に出したが最後。
(ひび)割れた(きず)は脆くも内実を白日の下に晒しだした。



「中学三年間バスケするだけで良い。そう言ったよな」

「はい、確かに言いました…」

「オレはやった。まだ何かあんのかよ」

「バスケ…好きになりませんでしたか、」

「ハッ、あァ。大ッ嫌いだね」


いよいよ感情が全身を支配し始める。
震える拳、脚。
負のオーラ全開の奴の面は逸らされることなくこの顔にぶつけて来る。

不愉快極まりない。








ケロイドに拍手を

-これは賞賛ではない-




(ここまで(きず)を抉る奴は珍しい)

(それに対する敬意だと思ってくれ)

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