黒子のバスケで7題

□す たんだーどはいらない
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ハードな練習メニューをこなして日向の「解散!」の声。
やっと帰れる、そう思って何気なくポケットに手を突っ込んで。
はたと気付いた。
がさごそと鞄や制服の至るところを調べる。



「…やっべ」

「どした、伊月」

「なんか家の鍵落としたっぽい」



しかし、それらしき金属は出てこない。
どこで落としたのだろうか。
教室か?廊下か?トイレか?部室か?



「悪ぃ、先に帰ってて」

「一人で大丈夫か?一緒に探すぞ」

「いや大丈夫。それに、お前今日早く帰らなきゃいけないって言ってただろ」



あ、と呟くと決まりが悪そうな顔をして日向が立ち去った。
謝罪が飛んできたがそれを後ろ手で返す。
確か鍵は放課後まではあった筈で。

取り敢えず一番有力でありそうな教室を捜索してみることにした。






「んー…無いな」

「何がだ?」

「っうわ!?…ッ明宮、先生」

「どうしたんだ、こんな遅くに」



忘れ物か?

教室の入り口に佇んでこちらの様子を窺う、その片手には鞄が。
どうやら帰りがけのようだ。



「えっと、家の鍵を…無くしちゃって」

「鍵か、一応職員室に何個か届いてはいるけど…見てみるか?」

「え、あ…お願いします」



夜の職員室ともなると先生方も疎ら。
きっと残っているのは残業をしているのだろう。
ぼーっと中を眺めていると明宮先生が数個の鍵を持ってきた。



「あ、これです」



幸運なことに家の鍵は先生の手の中に収まっていた。












「先生、」

「うん?」

「先生は、誰にでもこういうこと…するんですか」



現在進行形で今明宮先生の車で自宅まで送ってもらっている。
理由は、一人で帰るのは危ないからとのこと。

しかし実際学校にはまだ生徒は残っていて。
何故自分だけが、そう思って聞いてみたのだが。



「…さあ、どうだと思う?」



はぐらかされた、そう思うもその先を聞き出す術をこちらは持ち合わせてはいない。
結局この後は話らしい話もせず。
車内は先生のかけたニュースと時折聞かれる自宅への道のりだけであった。






「ありがとうございました」

「どういたしまして」



いつもより大分遅くなった帰宅時間。
誰もさして気にはしないけれども。
最後に一礼して背を向けて身体は玄関へ。



「ああ、そうだ」

「?何か」

「俺はね、伊月クン」



全開にした窓の枠に右腕を乗せて。
真っ直ぐとこちらを見てくる。

それは学校で見せる生徒受けの良い笑みではなく。
もっと妖しげなもの。



「どうでも良い子にも構うほど、お優しくはないよ」



だから、そう一端言葉を切って。
先生の口が次に何を言うのかオレには分からない。



「覚悟、しておいてね」








スタンダードはいらない

-欲しいのは-




(ニヤリと笑ったその表情は)

(今まで見たことないものだった)

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