あべみはべ

□伝えたい。もう一度。
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阿部先生の指導は初めてで、三橋は彼の乱暴な言葉と、いつも不機嫌そうな目を、怖い。と思っていた。
しかしそれは外から見た彼であっただけだと、今までの誤解を謝りたくなるほど、指導は優しいものだッた。
「そ。上手い。ブレーキの踏み込みはさ、最後に緩めて自然に止まるようにしねーと、がくっ。てなるだろ?運転してるヤツは自分で身構えてっから良いけど、助手席とか後ろに乗ってっと、ビックリしちまうから。でも、三橋くんは上手いよ」
「う、ひっ」
「あ、もうちょっとスピード出せ。車の流れを止めちまうから。ここの法定速度は何だ?」
「ごじゅ、っキロ?…です。」
「良く見てんじゃん。出しすぎねぇように踏み込めよ」
「は、いッ」
「ギアチェンジは一個ずつゆっくりはめてけば良い。んな急いで入れなくていーぞ。だからってセカンド・サードの走行は長くとらなくていいから。」
阿部の指導は上手い。
三橋が緊張しているのをちゃんと汲み取り、褒めながら優しい声を出す。
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