おはなし
□いつもとおなじ。
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「ごちそーさんっしたーっ」
威勢の良い田島の声が青空に響いた。相変わらず食うのが早い。
しかし…
「田島ー、これ食う?新商品ーッ」
「何っ?食う食うっ!!」
「2種類あンの。どっちがいい?」
「両方開けよーぜっ」
水谷と田島が味違いの同じ菓子箱を間にして話し始めた。
水谷はまだ片手に昼食を持ったまま。見るからに甘そうなチョコレートがけの菓子パン。生クリーム・イン。
それに加えてまたチョコレート菓子だ。チョコレートのくせになんだよパンプキンとか和栗とか。その時点でまずチョコじゃねぇだろ、という言葉は飯と一緒に飲み込んだ。
つぅか三橋がまた羨ましそうに見てんなー…。
「三橋も食うよねー。だいじょーぶ、あわてなくても残しとくから」
「う、あり、がと。あっわっ」
水谷に話しかけられることによって弁当への集中が削がれたためだろう、三橋が箸に持っていた卵焼きを落とした。
ベタなやつ…
オレも、水谷も阿部も泉も、三橋の落したおかずに気を取られている一瞬の間。
ふ。と視界の隅に入った田島の顔。
どきり。とする。
田島は、怒っている風でも泣いてる風でも、なんでもない顔をしていた。
真顔とも違う、しかし、何も読み取れない顔。
ただ、本当に一瞬のことだった。
「3秒ルールっ!!早く拾え、三橋っ!!」
泉に乗りかかるように田島がコンクリートの地面を指差した。
三橋は言葉通りすぐに拾おうと手を伸ばす。
「バッ、てめぇアホかっ!!腹壊したらどーすんだっ!」
阿部の怒鳴り声が響き渡った。