Novel-Pop'n music
□act 2. さよなら
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名残惜しまずに。
何の後悔もなく。
眼を背けるように。
掌を振り払うように。
ただただ微笑んで。
手を振って。
『さよなら』
できると良いね。
誓った言葉を、今でもはっきり覚えている。それが例えどんな場所でも、どんな時間でも、どんな場合でも、誰に向かう言葉でも確かなもの。
言えたのは。
大切なのは、決して今ではないから。
『良いの?夕陽。もう───戻れないのよ?』
『……うん。大丈夫』
だって、そう決めた。
誓った。
宣言した。
それならばもう───何も怖くなんかない。
君がいてくれた。
あの人が存在した。
私は、歌を歌って。
示すから。
だから───…。
りりりりり。
「う、…にゅ」
りりりりり。
「……………あう?」
ベルのような音が耳に入ってきて眼を覚ます。無意識に壁につけてある時計に視線を移すと、六時五十分を指していた。