Novel-Juvenile Talk
□命、零に裂き。
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肉体だけでは足りなくて命までも刈り取った。
後はもう、沈黙しか。
「俺な」
眼の前の動かない肉塊に語り掛ける。当然だが、返事はなかった。当たり前の様に死んでいる。当たり前の様に俺を──置いていった。待っていてもくれない。相変わらず男には冷たい奴だ。今度メイドの格好でもしてみようかと思案する。
傑作だな。
傑作以外に有り得ない。戯言所の話じゃない。
「…ずっと疑問に思ってた事があったんだよ」
眼の前の肉塊は返事をしない。怒っているのだろうか。つむじを曲げるなんて、珍しい事だ。
どうして。
「どうして、お前──泣かなかったんだ?」
あの時も。
あの時も。
あの時も。
あの時も───。
そして、先刻さえも。
どうしてお前は、いつも涙を流さない?
俺は、流すのに。
流しているのに。
「──何で逃げなかったんだよ──逃げたら、すぐ、辞めてやるつもりだった、のに……」
感触が残っている。この掌に。赤い赤い血が飛び散って、柔らかい肉の感触が心地良かった。
でも。