Novel-Guilty 1

□倖福論
1ページ/5ページ

私は貴方より倖せだ。
貴方は、私より不倖だ。
貴方は──不倖だ。

倖せに、なろう。















「ソル、倖せとは何なのでしょうか?」

「あ?」

真っ白い雪が空から堕ちてきて、見渡す景色を銀世界に染める夕方、ふとカイが口を開いた。いきなりの概念的過ぎる質問に俺は間の抜けた声を洩らす。カイに視線を向けると奴はこれと言った様子もなく、頁の開いた小説に眼を通していた。

「だから、倖せとは何の事なのでしょうかね?と聞いたのですよ」

疑問を疑問のトーンで返す俺を気にする素振りも見せず、再度同じ様な問いを投げ返すカイ。俺は答えに詰まる。

倖せ。

これと言った決定的な形も形容詞も想像もない感覚。言葉で表現するのは簡単に思えて難解。説明するべきでない単語だ。それを説明しろと言うのか、この子供。

溜め息を吐く。

「嬉しい時に感じる感覚…じゃねぇのか?」

「『嬉しい時に感じる感覚』。ふうん。まぁ、簡単に言えばそうなのかもしれませんね」

「ヤケに突っかかってきてないか?お前」

「いいええ。うふふ」


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ