Novel-Guilty 1
□frail
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彼は、炎を携えたあの人は、弱い。
愛しい程に、弱い。
「起きろ…、…坊や」
耳元、耳殻の直ぐ上で、声がした。寝呆け眼と瞼を指で擦り、声のした方にぼんやりと顔を上げる。
ソルが、居た。ただし泣いている。
「…ソル…?」
眼を見開き、彼を凝視する。幻覚かと見つめるが、確かに、細い眦から涙が零れている。喉が嗚咽を洩らしている。
「…っ坊…」
今にも壊れそうな、折れそうな声を吐き、彼は私に抱き付いてくる。しっかり、しかし儚く、縋り付いてくる。
時々、この様な事はあった。ソルが泣いて帰ってきて、何をしている時でも私から離れない。泣きじゃくる事しか知らない子供の様に、私の傍に自分を繋ぎ留めておく様に、擦り寄ってくる。
弱い、自分を曝け出してくれる。
「…ソル、大丈夫ですから…ね?」
暗黙の内に離してくれと頼むが、ソルは頭を何回も横に振り、抱き締める腕の力を強くした。
「嫌だ…っ…そ、ばに…居てくれ…っ」
喉を震わせ懇願してくる声を、払い除ける事など出来ない。私は眼を眇め、一生懸命に離れようとしない背中に両腕を回した。