Novel-Guilty 1

□大切なもの。
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ただ、返ってくる青年の声は、何処かいつもの覇気がない、精彩に欠けたものだった。

ソルは訝し気にカイの隣に座り、自分でも似合わないと感じたが夜空を見上げた。

星が輝いている。
つまりは、燃えているという事で。

火。
赤。
炎。
紅。
焔。
赫。

ものが傷付くという映像は、何処か心惹かれる。

焼く。
破く。
叩く。
流す。

その為の炎、水、手。

何となく引き付けられる狂暴性。壊れるシーン。狂う場面。砂嵐の画面。暗くなる景色。

………。

「ソル」

「あん?」

「嫌いです」

「…ああ?」

「傷付きましたか?」

「……………」

傷付いたか。

「…傷付いた」

「そうですか」

ああ、解った。















ごめんなさい。
ごめんなさい。
だから、やり直させて。



「…あ」

ことん、という軽快な音を立てて倒れたカップの下には、もう茶色く変色されてしまった書類があった。

…零してしまった。


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