書庫5

□天然不思議青年 後話
2ページ/6ページ

「なんかおもしれー顔してる」

一気に赤面した銀時がゼエゼエと息を整えるのを見て、土方はおかしそうに笑った。
恋人関係においては銀時の方が一段低く身構えざるをえない。何しろ土方は銀時の行動にほとんど動じないのに対して、銀時はい土方の一挙一動に過剰な反応をしているのだから仕方がなかった。

「そ、そう?」
「百面相してたぞ」

うん、と頷いて土方はその白い手を伸ばすと、軽く銀時の唇の端を引っ張ってみる。以前見つけられなかった指先の脈拍を見つけて、また銀時はどきりとした。そのまま手を伸ばして彼の後頭部に手を差し入れ、頭ごと引き寄せてみる。もともとさしてなかった距離が一気に近付いても、土方からは引き剥がされない。
寸前で口角を引っ張っていた手を放して、土方はぱっちりとした目蓋をそっと伏せた。ギリギリにならないと目を閉じない土方とのキスは、駆け引きめいていて銀時はその度に唇が触れる短い時間に次々に様々な感情を味わうのだ。
俺だけドキドキしてんのかな、だとか、先に目を閉じたら恥ずかしいよな、とか。
大抵そんなくだらないことばかりではあるが。

そのままその背中に手を滑らせて。今日こそは行ってやる、とちらり、薄目で奥の寝室として使われている部屋に銀時は視線を走らせる。土方が来る日はいつでもばっちりと片付けているのだ。
ティッシュ良し、ゴム良し、布団はフカフカに干している。
土方と銀時が付き合いだして万事屋は衛生面が飛躍的に向上した。初めてが万年床、というのは誰だってちょっとイヤだろう。
そんなところまでばっちり考え抜いて、いざ、と腰を抱いたまま土方の体を浮かすようにして促そうとしたそのとき、

チャララ〜ン♪チャラッチャラッチャラッチャラッチャッチャ〜♪

どこかで聞いたことのある曲が、横に無造作に掛けてあった隊服の上着から響いてくる。
瞬間、ぱっちりと目を開けた土方はさっさと唇を放してしまうと立ち上がり、迷いもなく上着から携帯を取り出してしまう。銀時の伸ばした手は力なく彷徨ってソファに落ちた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ