書庫5

□天然不思議青年 後話
1ページ/6ページ

銀時は悩んでいた。これ以上ないほど悩んでいた。

悩みの種は、最近脳内で思考の割合を急速に拡大させつつある先日ようやく恋人になったばかりの人物――――土方十四郎そのひとについてである。因みに土方は、れっきとした男性だ。銀時は先日までヘテロセクシュアルだったのだが、うっかりと紆余曲折の末に目でコロされて今では完全に周囲からホモ認定を受けていた。せめてバイといってください、と頭を下げてお願いしたいところではあるが、出来たばかりの恋人に見捨てられて見えなくなったら大変である。何しろ銀時の恋人は、大変な特技兼疾患持ちで、精神的に受け入れられない人間は問答無用で見えなくなってしまうのである。完全な無視だ。視界にも入れてもらえない。
さて銀時の悩みといえば、元ヘテロな彼らしいといえば彼らしいものであった。
付き合いだして一ヶ月。キスはできるしひっついても平気だし、知れば知るほど土方は接触に対して無抵抗だった。あの組織のお母さん役をやっているせいか、おかしなのにひっつかれるのには慣れているらしい。
銀時が彼に求めたいのは親子関係では勿論なかった。
手を繋いでキスもしてボディタッチもOK。
準備は(多分)どちらも大丈夫だ。土方の場合、見た目より考えていることがずっとフッ飛んでいたりするから、そこを通り越していきなり妊娠というステップになっているのかもしれないが、いくら天然でもそれはなかろうと一人銀時は心中頷く。あの顔であの年だ。
女性経験がないはずがない。そもそも男は妊娠できない。
土方はできると思っているかもしれないが、いくらなんでもそこまで天然ではないだろう。というか本気でそんなことを考えているなら天然を通り越してちょっと危ない子だ。
うんうん、とやたら首を上下させた後、銀時がふと顔を上げるとそこには土方の顔があった。まさしく目と鼻の先だった。
この男は精神的にではなくとも本当に目が悪いのではないか、と銀時は思ってしまう。やたらと接近する癖があるので気配を消されたりした日には、寿命が縮んでしまうかと思うくらい驚くのだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ