書庫5

□わんこと子供たちの日常
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もう少し休んでいればいいのに、と近藤は言ったらしいのだが、書類がちっとも減っていないことに怒った土方は強引に復帰を決めてしまったのだという。一向にこちらの隊士たちも、書類捌きは上達していないらしい。
先に屯所に寄ってきた斎藤に、土方はそんなに気を使わなくてもいいのにと苦笑して、それから喧嘩はしないようにと言ったから喧嘩をするような男が残っているのだろう。

土方は、子供を六人も産んだのに全く衰えない。

斎藤は元々老け顔気味ではあったけれど、土方は年相応の容貌をしていたと思うのに、不思議なことである。これで目も当てられないほどに子育てと出産でやつれてしまっていたら何が何でも奪ってやったのに、と思う斎藤は、やっと最近年相応の顔になった。否、顔相応の年になったというべきであろうか。
それだけの間、彼を慕い続けてきたことを思い出して、斎藤は一寸切なくなった。

「わんこちゃん、どうしたの?」

お具合悪い?
と首をかしげて聞くきらに、なんでもない、とぎこちなく斎藤は微笑んだ。
だっこ、とばかりに伸ばされる手には苦笑いをして、小さな体を抱き上げるときらは嬉しそうに笑って斎藤の首に抱きついた。
きらに悪気はない。素直なだけである。
わんこちゃん、というのは父親たちに吹きこまれたのがそのまま定着してしまったのだ。
副長の狗、とかつて自分を呼んでいたあの男だろうな、と斎藤は見当を付けているけれど、子供に言われる分にはなんだか微笑ましくなってそのままにしている。
土方が傍で聞いていたら、怒るときには怒らないとしつけに悪いと眉を顰めるかもしれない。
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