書庫5

□あなたもわたしをすきすぎる
1ページ/27ページ

高杉は土方を愛している。

この世で一番愛している。こんなに心を傾けた人間は他にはいない。他の誰かが土方の横に居るだけで、嫉妬に気が狂いそうになるほど、高杉は彼を愛している。
高杉が土方を見つけたのは、攘夷戦争の末期、潜入した江戸でのことだ。結局腰の抜けた幕府の中枢を狙ったテロは失敗し、天人の軍に追われて桂や銀時と別れ散り散りになっていた時古道場の前を通り過ぎた瞬間、道着を脱いで水を浴びていたのが土方だった。
一瞬のことだ、土方は高杉を見ては居なかっただろう。
ただあまりに眩しい白い肌と、ほっそりとした華奢な体つきと、物憂げに伏せられた目蓋の守る美し睛に、高杉は恋に落ちた。
一発KOだった。

当然戦争の最中だ。それ以上どうすることもできずに、そのときはそれっきりになったのだがそんなドタバタした中でも道場の名前はしっかり覚えていた自分を褒めてやりたい高杉である。
それから後、あまりに色々なことがあったのものだから一時その記憶は置き去りにされていたのだが、それから十年近くが経ちふと市井で見かけた短髪の青年を見て、高杉は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
やっぱり一発KOだった。
それから真選組の鬼副長となっていた彼がかつてのボロ道場で水浴びをしていた少年だったということを(再会したときから高杉は確信していたのだが)を確認し、それから高杉の猛烈なアプローチは開始されたのであった。

未だに高杉の周囲が口を揃えて、何故あれだけのことをしておいて恋人になれたのか分からないと言う。
高杉はストーカー(超が上に付くかもしれない)行為をさんざしていたくせに、どういう魔法を使ったのか無事に土方を射止め、現在絶賛同棲中なのである。まぁ上に超がついても高杉は八百屋の店先に埋まったりはしなかったけれど。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ