書庫5
□あなたはわたしをすきすぎる
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「何で俺が。似蔵に申し付ければ…」
「あいつは駄目だ」
即座に否定された。
似蔵ならば高杉の命令には多少の無理があったとしても理由も聞かず従うだろう。万斉とて高杉には心酔してはいるが、わざわざ天敵の後ろをついて回りたくはない。
「この間やらせたら、土方を斬ろうとしやがった」
なるほど、もうやらせたらしい。
そりゃあ斬ろうとするよな、と自分で名前を出しておいて万斉は納得とした。自分だって高杉が土方にここまで入れ込んでいなければ、斬ろうとするだろう。
「…高杉殿は行かないのでござるか」
「行けたらとっくに行ってる」
ズビ、と電話の向こうで鼻をすする音がして、風邪を召されたのでござるか、とうっかりと聞いたのが悪かった。
「あいつが布団持っていきやがるからよォ…丸まってるのは可愛いけどな、クク」
たちまち声のトーンが変化して、地雷を踏んだと万斉は自分の迂闊さを呪った。
高杉の『いかに土方が可愛くて綺麗で俺の嫁にぴったりか』主張のスタートスイッチを押してしまったらしい。
健康についての当たり障りのない話題を振ったつもりが変なところに行ってしまった。
こうなった高杉は小一時間は止まってくれない。