書庫5

□家族の肖像 毛玉×2
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「ははー!」
「あんまりくっつくなよ、天海、作業員が驚く」
「ははアレ!ちちのふねとおなじかたち!」
「…俺にゃどれがどれだか分からねぇが…」

よく見てるな、とくしゃりとくるくるの髪をかきまぜてやると、ニカッと天海は笑ってやっと硝子から顔を離すとててて、と短い歩調で駆け寄ってくる。
案の定押付けすぎて少し紅くなっている頬を撫でてやると、くすぐったそうに笑って土方の着流しの膝によじ登ってきた。
天海は兄弟の中でも人一倍ひとなつこい。

気が付けば土方の布団にもぐりこんできたし、さりげなく膝の上に陣取ったりで、天海の呼ぶ『ぎんちち』こと銀時は時折苦笑して「父親そっくり」と言っては天海の頬をつついて遊ぶのだ。
本当に、そういう要領の良さは坂本そっくりな子どもだった。
何故か子どもたちはみな土方には似ないのだが、それはそれで安心してみていられる土方である。
いつの間にか三男二女と父親五人(というと一斉の反論があるのだが…土方に対して)という大家族になっていはいたのだが、日常的な掛け合いはあったとしても土方家は実に平和なのだった。

(なんつーか…それも恐いような)

すっかりこの状況に慣れてしまっているが、テロリストのはずの高杉と桂はそれでいいのか、だとか。世間一般の目だとか、色々障壁はあるはずなのにそれすらも勝手に順応してしまって割り切ってしまっていることがいいのか。
答えが出せないのも困りものである。

思うよりずっと柔らかいその天然パーマをかき混ぜてやると、天海は嬉しそうに笑う。
本当に、人懐っこい子どもだ。きっと父親そっくりに育つだろう。
明るくて、おおらかで、大きな子どもに育つだろう。周囲を和ませて、支えられる。愛される子ども。

その方がきっと、ずっといいのだ。

「ちち、おそいね」
「まだ予定時間には少しある…早く会いたいか?」
「ん、ちちといっぱいあそぶ…」
「今月は半月一杯居られるらしいから、焦らなくてもいいぞ」
「うん…」

ごしごしと目を擦っている天海は昨日の晩はしゃぎすぎて眠れなかったらしい。
こっくりこっくりしている頭を引き寄せて、腕のうちに抱え込んでやるとふるふると頭を振って、それでも起きようとしていたけれど、次第にうつうつと目蓋が降りてくる。ターミナルに来る都度、天海は同じことを繰り返しているのだ。
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